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‖雨音ー阿高

…ざああ。


雨がおれの体を蝕んでいく。
その雨はとても冷たくまるで
…氷の刃。


天を仰ぐ。


おれの頬から涙が
幾度も幾度も流れ落ちる。


(藤太…)


おれのせいで
あいつは
沢山の血を流した。


それなのにあいつは
おれに
微笑む。


胸元に光る1つの勾玉。
だがそれはどうでもいい
…がらくた。


あいつには
あいつを待つ人が居る。
それなのに
おれはあいつの全てを壊してしまった。


おれは
必要の無い人間。
人間ではない物の怪。










…ダカラ

ダレカオレヲ殺シテクレ…。










…そっと誰かがおれの手を握りしめる。
おれはゆっくりとその方向に顔を向ける。


それは
鈴だった。


彼女の瞳からは涙が溢れている。


「…阿高」


どうしてお前は物の怪の俺を放っておかない。
この気持ちの悪い物の怪のおれを。
どうしてお前はおれのために涙を流す…。



「いっしょに行きましょう。」


…とくん。


鈴の手は仄かに温かく
凍ったおれの心を溶かしていく。


ざああ…。
雨が降り続ける。



雨音が全ての音を掻き消していく
…静寂の音。




†阿高†



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