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‖雨音ー鈴

…ざああ


雨がさんさんと降り続ける。

何かが光り輝く
その色は朱色…?
いいえ、もっと透明感に光輝く
…色。

わたくしは
仄かに輝くその場所まで歩み寄る。

その光はとても綺麗で
でもどこか切なげな
…色。


ぽた…。



(…人?)



ぽたた…。



わたくしはゆっくりと
彼の方まで歩み寄る。
彼は天を仰いだまま
何かを想っている。



「阿高」



小さな声でわたくしは囁く。


(…涙?)


ざああ…


わたくしは
…どうしてこんなに無力なのだろう。
彼が泣いているのに
わたくしはどうする事も出来ない
…無力な人間。

この人のその心の傷を知りたい。
この人の心の闇を取り除きたい。

…でも
どうする事も出来ない。


佇む彼、
それを見つめるわたくし。


ざああ…。

雨音が
全てを覆い尽くす。


ただそこには静寂の世界しか広がらない
…暗闇の中。


「あ…たか」


わたくしはもう一度囁く。



彼はゆっくりとわたくしの方に顔を向ける。
光を失ったその瞳は…


あまりにも冷たくて
自分の非力さを感じる。


「…おれが
あいつを殺したんだ」


ざああ…。


冷たい雨。
体を貫く水の刃。


わたくしは彼の手を握りしめる。
その手はとても冷えていて
まるで冷たい氷の結晶。


永遠と降る雨。
その雨は止む事を知らない
…心の雨。



†鈴†





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