小説 | ナノ




‖雪

ちらちら
雪が舞い落ちる



隣で遠子が頬を染めながら言う
「綺麗ね…
一面銀世界だわ」
ぼくはそっと
遠子の小さな手を握りしめる
「そうだね
こうして見ると色々なことを思い出すよ」
彼女はぼくの手をきゅっと握り返す
「色々なことって?」



「君とぼくが再会してからのことだよ
…遠子と逢えなかったらきっとぼくは
…小碓命として生きていたんだと思う」



「ありがとう
ぼくを見つけてくれて」



彼女は
ぼくの肩に頭を乗せる
「馬鹿ね…
わたしは感謝される様なことちっともしてないわ
只あなたがいつまで経っても帰って来ないから探しに来ただけよ
…あの時あなたを殺めようと小刀を握りしめてたわ
でも…
わたしからあなたを取り上げると何も残らないって気づいたの」



「小倶那は小倶那だから」



「うん」



彼女は
くすくすと笑う



「ねえ
雪が溶けたらこっちに菅流と象子が来るそうよ
どうやら口説きに成功したらしくて
その報告だって」

「本当
楽しみだね」



「うん」



ぼくは
彼女のお腹に優しく触れる…



とくん



「その頃にはもう産まれてるかな」



くすくすと笑いながら
ぼくの手の上に自分の手を重ねる
やんわりと温かい彼女の手は
お腹から聴こえる脈と同じ様に
心地よい音色が肌に伝わる


「きっと
菅流驚くわよ…
おれ達より早いなんて
って言いそうね」

「彼なら言いかねないね」


「…寒くなったわね」

「中に入ろうか
君もこの子も風邪を引いてしまう」

彼女はくすくすとまた笑い
小さい頃から変わらない笑顔をぼくに向ける

「そうね
…でもわたしに似て頑丈な子だから
これしきのことでへこたれないわ」

「かもね」



二人の笑い声は
そっと銀世界に鳴り響く


新しい生命が
もうすぐ
この土地に芽生えようとする…



†小倶那と遠子†
〜日高見より〜




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