好奇心旺盛な弟はいつも無茶ばっかりしていた。あいつが小学校上がりたての頃、一緒に帰ろうとしたら先に帰ってるし、帰ったら家にはいないし、ようやく帰ってきたら傷だらけで、ランドセルを持ってないと思ったら置き忘れてきたって。度々猫や犬を拾ってきたもんだ。うちじゃ飼えないってあれほど言っても拾ってきてた。そのたびに泣きながら元の場所に戻していく姿に俺も悲しくなった。それからはしばらくなんも拾ってこなくなったが、あれは確かルフィが小学2年生の頃。




「……ルフィ。なんだ、ソレ」


「拾った」




そろそろルフィの拾い癖も治ってきたなと思った頃、久しぶりにあったソレは進化を遂げていたのだ。

チラリと視線を対象のものにずらしてみた。毛は黒、パチパチさせた目が俺を捉える、かと思いきやルフィを見たり下を見たりとあっちこっち移動させている。すげぇ小せぇな、でも今まで拾ってきた中で一番でかいぞ。…ていうかソレ、




「…人間じゃん」




ルフィの左手の先にいるのは、まだルフィよりも小さな女の子だった。


いつになくルフィが綺麗な服かと思ったら、その女の子が土だらけの洋服を身につけている。すぐに捨ててきなさい、だなんて人間相手に絶対言えねぇ。ていうかどこの子だよどこで拾ったんだよ。



当時小学5年生の俺は、何をしていいのか分からずにその子にいろいろ聞いた。名前は?お母さんは?家はどこ?何を聞いても満面の笑みで返されて、結局ろくな返事が聞けなかった。家に帰りなさいと外に出ても一歩も動かず、どこで拾ったとルフィに聞いてみたら家の前だと。


そのまんま家に置かせて、ジジイに聞いてみても「別にええんじゃないか」って言いやがった。この家の状況じゃなくて、この子の家の状況だろうが、なんで俺が一番まともな考えしてんだ。すっげぇ考え込んでたが、晩御飯を食べさせたらやけに美味しそうに食べる顔を見たらそんなもん吹っ飛んじまった。




「あのね、お母さん、いないの」


テレビを見るころ、隣にいた女の子が突然言った。まだ幼いその子のゆっくりとした発音もままならない言葉を一生懸命聞き取った。

お母さんが、いない。

その後に笑ってまた言ったんだ。お家もないの、って。どういうことだろうかって、聞いてみたかったけど小さなその子にこの言葉の意味がわかるのかとか、親がいないって笑って言うもんだから聞けなかった。なんだか境遇が俺らに似ていて、本当は気にしてるんだろうかとか、寂しいだろうけど、平気そうに笑うのがルフィと重なって、何とも言えない気持ちが降りかかった。
辛かっただろうなって、思った。



次の日の朝、なまえといった少女と顔をあわせたルフィは「お前も今日から俺の妹だ」って笑いながら飯を食った。そのおかげで学校に遅れそうになったが、まぁ、今日から家に待っててくれるやつがいるってだけで帰るのが楽しくなるな。



子育てエース奮闘記01

20100417

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