例えば、付き合いはじめて最初の誕生日とか、初めて出かけたときとか、初めて迎えた記念日だとか。そんな1つ1つの思い出がつまったアルバムを懐かしむように見ていればいつの間にか12時をまわった時計が知らせてくれた。閉じたアルバムを棚に戻し、思い出したかのように部屋の戸を開ける。




「赤也、」




明かりやコンポはそのままで、携帯も開きっぱなしだけど当の本人はベッドで大口を開けながら寝ている。こんなの今に始まったことではないし、むしろ中学のころから度々あるということを聞いている。いくら涼しくなったからとはいえまだ寒さを感じるこの季節。足元に畳まれている毛布をかけると、赤也の柔らかい髪の毛が風に踊ったので指にくるくる巻き付けてみた。赤也はこの髪を気にしているけど、私は赤也の髪の毛が好き。気持ち良さそうに寝ている姿もテニスをしている姿も。

そんなこと考えていると急に手首を掴まれるとそのまま背中に手をまわされ引き寄せられる。




「いたたたっ…!赤也……っ」


「へへっ、油断大敵っス」




悪びれもなく笑うもんだから、そのまま諦めて私もベッドに潜り込んだ。


あのときはまさかここまで来るなんて思ってもいなかった、あのときの私たちが知ったらびっくりするだろうね。ただ幸せを感じていたあのとき、同じ幸せを踏みしめながら感じている今。赤也がぎゅっと抱き締めてくれるから私もその背中に手を回す。中学のときも高校のときも今日も明日もこれからも、先のことはまだ分からないけど、大切な思い出として残していきたい。




「赤也、お誕生日おめでとう」





20110925
赤也お誕生日おめでとう!