そうだね、もし願いが1つ叶うなら、もう少しだけ。みんなと一緒にいたいな。



そんなこと言ったのはたった1ヶ月前のことだ。卒業式まで1ヶ月をきったその日、神楽から「願い」は何だと聞かれた。願いなんて考えたことない。例えばお金が欲しいとか、可愛くなりたいとか、自己の利益だけのために考えてきた願い事が何故かこの時、頭からぽっかりと消えていたのだ。今まで卒業を実感したことがなかった。だけど卒業を前にしたこの自宅学習期間に入る頃、初めて痛感したのだ。教室から姿を消した学級目標も、きれいに消えている机の落書きも。私の知らない教室がそこにはあった。いや、入学したてのころは確かこんな感じだった。まだ似合わない制服も幼い顔立ちも、あどけない会話も。…いや違う、最後のやつは私たちにはあり得ないほどに無かったといっていい。いきなりの馴れ馴れしい挨拶も、みんなで戦争のように食べたお弁当。先生の誕生日にはサプライズもした。結局辛子入りケーキに神楽がすごく怒ったこと。いつだってそうだった。授業だっておかしいしみんなやる気は起きない。ああ言えばこう言う。そうだと言えばそうじゃない。入学したてのころからすると大分大人びた顔立ちと様になってきた制服。だけど何1つ変わらない私たち。人と、他のクラスとズレてるなんてそんなの分かっている。どんなにこのクラスがおかしいかなんてそんなの1番分かっている。だけど私はこのクラスであったことを、このクラスのみんなに会えたことを誇りに思っている。そんなみんなが大好きだからこそ、卒業することが心に染みて、もう充分楽しんだ高校生活を引き延ばしたいと思ってしまったのかもしれない。時間は1つ1つ刻んでいるのだ。





「あら、こんなところにいた」
「何やってるネ!写真撮るヨ写真!」
「…ん。なんだか、寂しいなと思って」
「お前アホか?これで終わりじゃあるめーし、いつだって会えるネ」「そう。卒業しても私たちは3Zの仲間でしょう」
「…………うん!」
「ほら行くアル。なまえが揃って初めての3Zネ」
















笑ってまた会おう



20110301