あぁ眠い。1つ大きな欠伸をすると今度は寒さが私の首筋を伝った。天気は晴れだって言うのに、何がこんなに日本を寒くしているのだろう。先生、そこんとこお願いしまーす、なんちゃって。膝に掛けてるブランケットを肩にかけようと思ったけど、そんなことしたら本気で先生に怒られるから止めといた。


あぁ、いい天気だなぁと外を眺めていると、ポケットの中で携帯が震える。多分この間撮ったプリクラ機のメールマガジンか誰かのブログの更新を知らせるメールだろう。バイブ音が先生に聞こえていたのか、睨みをきかせた表情が私を見る。あー、ごめんなさい。





『でかい欠伸』





…………やっぱり違った。メールマガジンでも更新の通知でもなんでもない。そっと顔を向かいの校舎に向けてみると、対角線上にいる彼が私の携帯に表示されるメールの送信者と一致した。何やってんだ、ちゃんと授業聞けよ。とは思ったものの、彼があの教室にいることは自習時間であるということ。なんだそれなら仕方ない………いや、逆にしっかり勉強しろよ。





『何見てんですか。ちゃんと勉強してくださいこの受験生め』





先生の目を盗んで皮肉たっぷりの文章を携帯に打つ。しばらくすると、メールが届いたのか携帯を確認する姿が見える。あんな文章打っといてなんだが、自分も授業を聞かなきゃいけないんだけど。





『合格判定A。文句あるか?』





大有りだこの野郎。何余裕こいてんだこの人。自分は絶対合格するってその態度が今に落とし穴にひっかかるんだから。それにそういう人が1番落ちやすいってテレビでやってたぞ!



なんだかんだ自由に過ごしながらも、いつもトップ争いに参加する(らしい)ロー先輩は頭がいい。こうして自習の時間に勉強していなかったり授業自体をサボったりするけど、頭だけはいい。コッソリ言えば、私も勉強を教わったことがあるうちの1人だ。





『だからってこっち見るな馬鹿』

『見るくらい俺の勝手だろう』





初めて会ったときからそうだ。口出しされることは嫌いだし、自分の意思は絶対に突き通す。何考えてるか分からないし、いっつもニヤニヤしてるし。その割には頭がいいから試験前は教えてもらっている。将来医者になりたいとか、本当にそう思っているのか謎だけど、応援したい気持ちは十分ある。見かけによらず教え方もうまいし、ちょっと小馬鹿にしながらも褒めてくれる…なんだかんだいって、良い先輩、だし。





『…なんで見るんですか』





授業も残り5分。いつの間にか黒板に羅列された文字をいまさらノートに書くのも気が引ける。目を窓の向こうへとずらしてみると、さっきから微動だにしないロー先輩と目が合った。一瞬目があったような気がしたけど、すぐに私が戻してしまったから分からない。残りは授業でも聞いておこうと思ったけど、バイブの鳴った携帯電話によって私の思考はストップしてしまったのだ。



授業終了まで残り3分、私がこの教室を飛び出すまで残り、3分。






From:ロー先輩
Sub:Re:
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なんでって、
そりゃ俺はお前のことが





好きだからだろ


    --End--








「先輩、あの…」

「ん、なにか用か?」

「あれ、…反則です」

「それで、返事は?」





Re:

「私も、」
返事はちゃんと自分の口で言いたいんです。





if様へ提出させていただきます。素敵な企画ありがとうございました。


20110101