「泣き虫」




そーちゃんはいつもいつも私をおいてくの。先にすすむそーちゃんが私から離れていって、1人になりたくなくて、そーちゃん待ってよって言ったらそーちゃんが戻ってきて私の手をつないで一緒にすすむ。ちがうよ、そーちゃんが私をおいていったんだよ。







「…泣くな」




総ちゃんが遠くに行っちゃう。会えない距離じゃないけどやっぱり毎日合わせた顔が突然明日からいなくなるのは寂しいわけで。…ううん、総ちゃんに会えないのが嫌だ。総ちゃん行かないで、嫌だ嫌だ嫌だずっと隣にいてよねえ総ちゃん。だけどそんな悲しい顔の総ちゃんなんて見たくない。私が悪いんだ。ごめんね総ちゃん、私はただ離れたくないだけなのに。







「泣くんじゃねェ、泣き虫」




久しぶりに見た総ちゃんは少し大人びた顔立ちだった。大きくなったんだねっていうと、ブサイクになりましたねェって昔と何も変わらない総ちゃんがいた。私が何を思ってここに来たとかどんな思いで総ちゃんを待ってたとか貴方は全然知らないんだ。少し和らいだ緊張も、江戸を歩いていた総ちゃんが隣で発した言葉のせいでまた熱を帯びた体。総ちゃんが置いていったとか遠くに行ったとかそういうのじゃなくて、嬉し泣きだコノヤロー。





涙の理由




「…結婚してくだせェ」

「…え…嘘、…嘘…」

「嘘じゃねーや。言うこと聞け」

「………はい……嬉しい、です」

「泣くんじゃねェ、泣き虫」




20100702


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