いつもの動きやすい服とは違って今日はロングTシャツに細身の長ズボン、羽織るものは昔から愛用している赤いコート。少し身震いがしてくしゃみが出たならそれは冬島が近いという証拠。



雪がちらちら降っている島に船をとめたらそこは真っ白な世界。うちのクルーの子供代表はすぐにサニー号の下で遊び出すの。チョッパー、雪なんか珍しくもないでしょう。ウソップもドラムで見たでしょ、雪なんて…。ルフィは今すぐ何か羽織るものを着なさい!…はぁ、全く言うことを聞かない3人。だけど数秒後ルフィだけは振り返って私を見て微笑んだ。


…あ、


少し雪の積もったトレードマークの麦わら帽子から覗く髪の毛。手配書によく似たその笑顔。私にとっては何よりも大好きなルフィの笑った顔。雪の白さのせいか、いつも以上に輝いてる君。



いつの間にか私はルフィの名前を呼んでいた。そして続くように言った一言……彼に聞こえないように、自分自身で喋らないように。そっと口に出した音は、真っ白な世界に包まれるように消えていった。


“  、    ”





それが聞こえたか聞こえなかったか私には分からない。ただ、自分にも伝わらないような言葉だったのに、ルフィは口を開けていて、そしていきなり船に手を伸ばしたかと思えば私に向かって飛んできた。状態は私に乗っかるルフィ、の図。はっきり言ってこの体制はかなり恥ずかしい(近い…!)。




「なぁ!今なんて言った!?」


「え…」


「なんて言った!」




脅迫のように彼は私に顔を近づけてくる。顔の距離だってもう10センチあるかないか。その体制が恥ずかしいのか、それとも答えるのが恥ずかしいのか。熱を帯びるかのように熱い。きっと今の私の顔は真っ赤だ。




「なんて言った!?」


「……あー」


「なぁ!」




あまりにルフィがうるさくて、気迫に押された私は思わず答えてしまった。呟くように。それを聞いたルフィはポカンとしたが、だけどまた私に向かって笑って誘い出すの。




「…雪、大好きって、言ったの」


「え」


「だから、雪大好き!」


「……そうか!なら一緒に遊ぶぞ!」




有無を聞かずに私を外に連れ出したルフィ。ていうかちゃんと降りなさい。いきなり飛び出すな!それと上着を着て。ウソップによって顔面に飛ばされた雪。私のコントロールじゃウソップじゃなくてチョッパーに当たってしまう。その間にウソップからの雪はどんどん顔に当たる。そんな私を見て笑うルフィ。ていうか助けなさいよ馬鹿。…くしゅん、あぁこりゃ明日風邪だ。きっと看てもらうチョッパーも風邪だな。…だけどこうやってみんなで楽しい時間を過ごすのが好き。こうやって私の手を握って握りながら逃げ回るルフィ。ルフィのその笑顔も私を呼ぶ声も、ルフィの全てが。


「すき、だいすき」




誤魔化す:ルフィ
20100617

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