ベンが、小さな女の子を連れてきた。くまのぬいぐるみ抱いてよ、ジーッと俺を見るんだ。純真無垢な、でっかい瞳がずっと俺を捉えるもんだから、視線を女の子からベンへと移した。うぉっ、すげぇ身長差だな。
「…ベン、どこの子か知らないがこれは犯罪だ。…そうか、ボインな姉ちゃんに興味がないのはこういうことだったのか…」
「…何を勘違いしているんだ」
そうだ、街で見掛けるボインな姉ちゃんを見ているときも、ベンは1人だけそっぽを向いていたな。なんだベン、男が成り立たねぇなァ!その時はそうやって笑い飛ばしたりしたが……まさかこういうことだったとは……。べ、別に人の趣味にどうこう言おうってわけじゃないんだ。男が好きならそれでもいいし(ただし船員に告ぐ、俺が相手なのはダメだ)、そいつがロリコンだったら何とも言わねぇ。…でもなァ、ベン。そんなどこの子か知らねえ嬢ちゃんを勝手に連れてきて手に掛けるのは…そんなのは、駄目だ。
「何言ってんだお頭」
「…え?」
「連れてきたんじゃない、着いてきたんだ」
「…は?」
それからベンは一から訳を話していった。町で目があったこと、そのまま着いてきたこと、元の場所に戻したこと、そしてその子が言った、親はもういないということ。
…は?待て待て、親がいない?
「俺の手じゃ無理だったようだ。お頭、どうにかしてくれ」
「は…ちょ、ベン待…おいっ!」
そのままその少女と見つめ合っていたら、俺の隣まで歩いてきてちょこんと座った。またまたその嬢ちゃんを見ていたら突然目があって、ものすごい幸せそうな笑顔をされた。…どうすっかなぁ。
とりあえず目的地に到着するまではその子を船に乗せておこう。そう思い、1日1日の時間が過ぎていった。その子の名前はなまえというらしく、おかしなことに俺のことを「パパ」と呼ぶようになったんだ。おお、いい響きだなァ…じゃなくて。
子供特有の明るく無邪気なおかげか、すぐにクルーを虜にさせた。なまえだって、同じくらいの息子がいるヤソップは当然のこと、ルウもベンもみんなに懐いているんだ。でも、1番に懐いているのは俺だけどな。
そうだ、すっかり忘れていたが、なまえとルフィの年齢は同じくらいなんじゃないだろうか。こいつも友達が欲しい頃だろうしな、帰ったらルフィとでも遊ばせてやるか。
「パパ、お島、もうすぐ着くの?」
「あぁ、着いたらいっぱい遊ばせてやるからなー」
「やったぁー!」
言っちゃァなんだが、なまえの笑った顔が今の俺らにとっちゃ1番大切なのだ。
子育てシャンクス奮闘記