決意
僕が意識を取り戻したのは、とある病院の個室だった。
何かの温もりを掌に感じながら、ふと目を覚ました。
此処は何処だろう。
見慣れない天井。
点滴の管。
片足に太く巻かれている包帯。
そして――
「華代?」
『…っ、先輩!?』
華代は僕の片手を両手で強く握っていた。
この温もりは君の手だったんだね。
『先輩!!』
「っわ!」
突然、抱き着かれた。
ベッドと華代に挟まれて、傷の痛みなんてそっちのけで赤面した。
華代の腕に包帯が巻いてあった。
そうだ、僕はあの時華代の事を――。
「華代、怪我は?!」
動けないまま大きな声を出した僕から、君は身体を離した。
『私は擦り傷と打撲で済みました。
先輩は片足を骨折しています。
あのトラックに跳ねられてこの怪我だけなら、奇跡だと聞きました。
でも暫くは此処から出られないと病院の先生が…。』
「暫く…?」
『あと2ヶ月くらいだそうです。』
「……そっか。」
テニス部の皆に迷惑を掛けてしまう事になりそうだ。
関東大会出場の望みはないけど、夏の全国大会に間に合わせてみせる。
でも、そんな事は如何でも良い。
華代が無事なら、それで良かった。
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