身代わり-2
危ない、華代が危ない。
直感がそう知らせた。
僕は持っていた傘を放り投げ、全力で地を蹴った。
スローモーションのようで、一瞬の時。
華代とトラックとの距離がだんだん近くなる。
20m程だろうか。
誰かが「危ない!!」と叫んだのが聞こえた。
10m…
周りの悲鳴が大型トラックのタイヤの摩擦音に掻き消される。
華代が恐怖で傘を落とした。
盲目の世界でこの轟音と人間の悲鳴だけが聞こえるのは、どれ程の恐怖なんだろう。
5m…
華代が目を固く瞑り、耳を塞いだ。
3m…
僕は華代に手を伸ばした。
1m、そして――
何かが衝突した音。
その音は、大型トラックと僕が衝突する音だった。
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