星空-3
桃が話しているのをずっと聞いていた僕も、口を開いた。
「本来の明るく戻った華代ちゃんに逢ってみたいな。」
「あとテニスもさせてやりたいんスよ。」
僕らは顔を見合せて微笑み合った。
すると――
「不二ーっ!!
桃ーっ!!」
活気のある大きな声だった。
桃と僕は声のする方へ顔を向けた。
英二が僕らに手を振り、此処に向かって小走りしている。
流石に走った量が多かったせいで、英二は汗だくだった。
僕は英二の前に素早く立った。
突然目の前に立った僕にぶつからないように、英二は足を止めて目を瞬かせた。
「英二、ごめん…!」
これでもかというくらいに、僕は頭を深く下げた。
桃も英二と同じように目を瞬かせていた。
英二は僕の肩を軽くポンと叩いた。
「顔上げろよ不二!」
躊躇しながら顔を上げた。
英二はとびきりの笑顔を見せた。
「いいっていいって!
早く元気になってくれたらそれでいいから!」
「……ありがとう。」
英二の優しさに、思わず泣きそうになった。
それを誤魔化すように言った。
「二人共、今日は奢るよ。」
「やったー!
桃の好きなハンバーガーにしよう!」
英二は子供のようにぴょんぴょんと跳ねた。
桃は僕らに突っ込んだ。
「先輩たちまだジャージ!
俺、門で待ってます!」
英二と僕は更衣室へ行き、桃は門の前で待つ事になった。
更衣室へ行く途中、愛と一緒に帰る華代ちゃんを見かけた。
二人は僕らには気付かなかった。
気付かない振りをしていただけかもしれない。
君に星を見せてあげたい。
この世界の景色を見せてあげたい。
だから、手術から逃げないで。
2008.9.14
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