謝罪-2

鍋パーティーを途中抜けしてしまった僕らは、リビングに戻るのが凄く遅かった。
僕らがリビングに戻ると、英二からすかさず突っ込みが入った。

「二人共遅いぞ!」

華代は不自然過ぎる表情で視線を斜め下に落とした。
僕は何時もと変わらないにこにこを心掛けたけど、愛と手塚のカップルは僕を怪しんでいた。
桃はからかいの口調で言った。

「ちょっと、抜け駆けなんかして何してたんスか!」

「ちょっとね。」

僕は自然に笑ってみせたけど、華代はドキッとしたみたいで、誘導の為に僕の腕に掛けていた手に力が入った。
ずっと黙っていた愛が仕方なさそうに言った。

「二人きりで話したかったんだよね。

お兄ちゃんってば、華代の事からかい過ぎちゃ駄目だからね。」

僕らを気遣う愛のフォローは救いだったけど、その目は僕を睨んでいた。
隣の手塚は何も言わず、お茶に手を伸ばした。
きっと愛と手塚は僕らが何をしていたのか、勘付いただろう。
お堅い手塚も、交際3年にもなる愛に何かしら手を出していると思うんだけど。
愛の部屋にあったあれが証拠だ。
手塚はあからさまに視線を逸らしている。
今度、手塚に何かと追及してやろうと思った。

『お待たせしてごめんなさい。』

華代が申し訳なさそうに謝罪した。
愛が華代のコップにお茶を入れながら苦笑した。

「お兄ちゃんみたいな彼氏で華代も大変ね。」

「酷いなぁ。」

僕は華代を椅子に座らせながら笑った。
でも、そんな言葉も愛のフォローなんだ。
愛は頬杖をつきながら華代に訊ねた。

「で、何を話してたの?」

『秘密。』

「兄ちゃんに教えてみろよ!」

何故か突っ込んだのは桃だった。
華代は兄に笑いかけただけで、愛に話を振った。

『愛だって手塚先輩と秘密のお話くらいするでしょ?

ね、手塚先輩。』

「え、あたしと国光が…?」

「あ、それ気になる!

手塚は何時も愛ちゃんとどんな話をしてるのかにゃ?」

英二は明らかに手塚をからかっていた。
桃も興味津々のようで、目をキラッとさせた。

「俺も気になるっス!

部長ってお喋りな方じゃないし。」

確かに手塚は生真面目な人だ。
明るい愛と寡黙な手塚は対照的だ。
愛は話し上手だから、手塚も気が楽なのかもしれない。

「国光は結構お話ししてくれますよ?」

「愛、余計な事を話すな。」

恋人の手塚が愛を制した。
英二と桃がぶーぶーと拗ねた。
華代が愛に話を振った事で、僕らの話題から完全に逸れた。
それからの時間は、手塚の口から何らかの恋愛話を聞き出そうと、英二と桃が躍起になっていた。

鍋パーティーは夜の9時に終了した。
僕と愛は手塚と桃城兄妹を玄関で見送った。
見えなくなるまで見送った後、リビングで後片付けを始めた。

「楽しかったね。」

「もう、皆して国光の事からかうんだから。」

「愛の前だと手塚は穏やかだからね。」

英二と桃にとって、手塚の穏やかモードは凄く珍しいんだ。
きっと愛が隣にいれば、グラウンドを走らせる量も減るだろう。

「あ、それとお兄ちゃん。」

キッチンで食器を洗い始めた愛は、僕が運んだ食器を受け取ってから言った。

「華代から後で全部聞くから。

筒抜けなんだからね。」

「そうだね、分かっているよ。」

愛はムッとしながら僕を牽制した。
二人は親友だから、お互いに何でも話する間柄だ。
きっと今日の事も知られてしまうんだろうな。
僕も手塚から何か相談させようかな。
でも、華代が持って帰った婚姻届は、二人だけの秘密なんだ。

「そうだ、愛に謝らないといけない事があるんだ。」

『何?』

この後、愛の気が済むまでひたすら怒られた。



2016.10.26




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