誕生日-2
「失礼します。」
ケーキを食べ終わった頃、病院の先生が病室を訪ねてきた。
華代の両親を呼び出すと、そのまま一緒に病室を出た。
残された僕らは不安に包まれた。
ついに、華代の人工呼吸器が外されてしまう。
まだ呼吸をしている華代を見つめた。
今にも目を覚ましそうな僕の恋人は、脳死してから少し痩せた。
点滴で栄養を補給しているだけだから、当然だった。
華代はもう疲れているから、そろそろ眠らせてあげないと。
僕はそう自分に言い聞かせた。
「何だよ親父と母ちゃん、影でコソコソと。
此処で話せばいいのに。」
桃はとても不満そうだ。
それも束の間、華代の両親は戻ってきた。
そして次に呼び出されたのは――
「周助君、少しいいかな?」
意外にも、僕だった。
如何して呼び出されるのか、全く分からなかった。
不安が過ぎりながらも、はいと返事をしてから立ち上がった。
桃が痺れを切らした。
「何をコソコソしてんだよ!
なんで俺と愛ちゃんには教えてくれねぇんだ?!」
「後でちゃんと教えるから。」
華代の母親は何故か嬉しそうに笑っていた。
桃は訳が分からなくなり、首を傾げた。
何故だろう、愛も微笑んでいた。
何か知っているのかもしれない。
病室より少し離れた部屋に案内された。
面談室≠ニ記載された札が掛かっていたこの部屋は、小さなテーブルとソファーがあるだけの殺風景な部屋だった。
華代の両親と僕はテーブル越しに向かい合った。
未だに華代の母親は微笑んでいた。
僕は妙に不安になった。
「母さん、一大事だぞ。」
華代の父親の声は普段より一段と低く、僕は余計に緊張した。
「いいじゃないですか。
華代の形見です。
私は周助くんにこの話をするのがとても嬉しいんですよ。
愛ちゃんに聞いた時から、楽しみにしていたんですから。」
形見?
愛に聞いた?
一体何の話なのか、見当もつかない。
「あの…その形見と僕に関係があるんですか?」
「ええ、とても。」
華代の母親は相変わらず嬉しそうに言った。
何が嬉しいんだろう。
「実は、だ。
昨日分かったばかりの事なんだが。」
自分の奥さんとは対照的に、真剣に話す華代の父親は険しい表情をしている。
睨まれているようにも感じた。
なかなか口を開かない旦那に相反して、華代の母親が一枚の紙を渡してきた。
見慣れない白黒の映像。
この場に緊張している僕にはこの映像が何なのか、すぐに理解出来なかった。
「エコー写真よ。
華代のお腹のね。」
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