二人きり-2

しんとした静かな病室に、華代と僕は二人きり。
僕は椅子を君のベットにもっと近付けて、君の綺麗な顔を覗き込んだ。

「おはよう、華代。」

君に微笑みかけた。
笑顔は得意な筈だと自負していたのに、上手く笑えなかった。
君の返事がないからだ。

「あのね、華代。」

僕はもう起きることのない君の手を握った。

「ごめんね。」

普段通りに振る舞おうとすると、余計に苦しくなった。
涙がベットに溢れ落ちた。
それは更に溢れて、ベットに染みを作った。

「ごめんね華代…。

僕が君に手術を勧めなければこんな事には…。」

駄目だ、涙が止まることを知らない。
格好悪くて、俯いた。

「ほんとに…ごめ…ん…。」

覆い被さるように、君をそっと抱き締めた。
変わらない、君の温もり。
でも君はもう目覚めない。

「僕の名前、呼んでくれないかな…?

華代…お願いだよ…。」

僕の涙は君の頬を濡らした。
僕は一生かかっても償いきれない罪を犯したんだと思った。
手術を勧めた僕が――君を殺したのかもしれないんだ。

「ごめん、頬が濡れちゃったね。」

君の頬についた涙を指で拭った時、ある事に気付いた。
君の首にチェーンが見えた。
これには見覚えがある。
そのチェーンに触れてみると、十字架が顔を出した。

「これは…。」

僕が以前、遊園地でプレゼントしたあのネックレスだ。
あの時と変わらず、シルバーの十字架は輝いている。
遊園地に行った時の君の笑顔が、ふと頭を過った。
嬉しさと同時に、また涙が込み上げた。

「着けてくれていたんだね。」

ありがとう。
人工呼吸器を装着している君の頬に、そっとキスをした。



2009.2.8




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