観察 (ゴーストと出逢う少し前)

“御主人は小夜が大好き。”

“!?”

「バフッ!」という咽せる声がした。
その独特の咽せ方の主はバクフーンだ。
今この時、小夜とシルバーのポケモンたちは日向ぼっこの時間を過ごしている。
談笑したり昼寝をしたり、この時間をどのように楽しむかはポケモンによって其々だ。
バクフーンは頬張っていた木の実を何とか飲み込んでから笑った。

“君は時々ストレートだから面白いよ。”

“え、そう?

だってほら。”

オーダイルが視線を送った先には二人の主人がいた。
ポケモンたちから離れた場所で、自然と寄り添い合って歩いている。
二人は時間が合えば、時々ああやって散歩をする。
研究所から出てマサラタウンを散歩する時もあり、オーキド博士のお遣いやスーパーへの買出しに出掛けている。
相変わらず仲睦まじい。
小夜と話している時のシルバーは、恋人である小夜を大切そうに見ている。
小夜もまた幸せそうな顔で綺麗に笑う。

“小夜もシルバーが大好きさ。”

バクフーンが自慢げに言った。
二人が交際に発展して本当に良かった。
一時は如何なる事かとひやひやしたものだ。
するとマニューラとクロバットが寄ってきて、ニヤニヤしながら一緒に二人を観察し始めた。
この二匹は他のポケモンたちよりも空気を読めない事が多く、オーダイルによく引っ掴まれている。
オーダイルは主人が小夜と二人きりになれるようにと度々気を遣っているが、この研究所ではポケモンたちが常にボールから出ている。
それに二人は何かとする事があり、長く時間を合わせるのが意外と難しい。
毎晩同じベッドで寝ればいいのにと思ったりするのだが、シルバーは恥ずかしがる。
だがいちゃいちゃとまではいかずとも寄り添い合っている二人を見慣れているポケモンたちは、一緒に寝ているくらいではもうさっぱり気にしないのだが。

四匹が二人の主人をガン見していると、小夜がシルバーの腕に手を掛けてシルバーを見上げた。
するとシルバーは一気に赤面する。
赤面症のシルバーを見て、マニューラ、オーダイル、クロバット、バクフーンの順に言った。

“ぞっこん。”

“首ったけ。”

“溺愛。”

“メロメロ。”

オーダイルだけがぽかんとしながら言ったが、他の三匹は面白そうに言った。
メロメロというバクフーンの発言に四匹は一斉に笑う。
彼処だけお花畑が見えるなどと騒々しく言うポケモンたちに、毛繕いをしていたエーフィがのほほんと呟く。

“楽しそうで何よりだよ。”

隣にいたスイクンがゆっくりと頷く。
傍にはぐっすりと眠っているボーマンダとコイルがいる。
修行を開始したコイルは疲労が溜まっているのか、仰向けで爆睡するボーマンダのお腹の上で身体を休めている。
すると周辺を見渡したスイクンが言った。

“私も寝よう。”

“じゃあ私も!”

スイクンは皆が昼寝をしていても静かに見守っている事が多い。
だが今日は眠りたい気分だ。
エーフィとスイクンが目を閉じたのを見て、バクフーンがしーっと言った。
騒々しかったポケモンたちははっとして口を噤んだ。
すると四匹も何だか眠くなってきた。

“俺たちも寝ようか。”

オーダイルの台詞に皆が賛成し、芝生にごろりと寝転んだ。
手入れが行き届いている芝生はふかふかしていて寝易い。
季節は冬なのに、空高くから注ぐ日差しは暖かかった。



2015.4.4




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