準備-2

ジバコイルが昼寝から目を覚まし、ゲンガーと話をしている頃。
バクフーンとオーダイルはコンビを組み、クロバットとマニューラのコンビとダブルバトルをした。
昨日、初めてダブルバトルをしたのをきっかけに始めた修行だ。
バクフーンとオーダイルは特に息が合うし、マニューラはクロバットの背中に乗って飛行出来る。
エーフィがバトルレコーダーを確認しながらクロバットに言った。

“やっぱり右に旋回して避ける癖があるよ。

バクフーンに読まれてる。”

“確かにそうかも…直さないとね。”

前々から指摘されていた回避の仕方を再び突っ込まれ、クロバットは反省した。
オーキド博士がポケモンたちに渡したバトルレコーダーは役立っている。
腕の指先を使えるバクフーンとオーダイルが主に操作し、エーフィが念力で操作する事もある。
現在はエーフィが操作し、それを皆が覗き込んでいた。
火炎ぐるまで炎を纏ったバクフーンをオーダイルが力の限りで投げ飛ばし、それが旋回するクロバットに直撃する映像が流れている。
クロバットにはかなりのダメージだった為、オボンの実で体力を回復した。

“次はゲンガーとジバコイルで組んでみたら?”

マニューラが二匹に振り返りながら言った。
二匹は穏やかに談笑しているようだ。
だが、オーダイルがマニューラに言った。

“ゲンガーとジバコイルはタイプ相性が良いとは言えないよ、どっちも地面タイプが弱点だし。

御主人は組ませないと思うな。”

“あ、そっか…。”

マニューラは鉤爪で頭をぽりぽりと掻いた。
バトルをするばかりではなく、もっとタイプ相性を勉強しなければ。
だが自分はシルバーのように頭脳派ではなく、がむしゃらにバトルをする肉体派だ。
エーフィはうーんと唸り、少し考えてから言った。

“ジバコイルが組むならボーマンダかラティオスじゃないかな?”

自分の名前が出たラティオスは、スイクンの隣で静かに目を瞬かせた。
修行の時間になると、ラティオスは基本的に自分から主張するのを控えている。
レベルは関係なく、修行に関しては後輩だからだ。
だが心の底でレベルアップに燃えていた。
先日、お互いの主人を背に乗せながらボーマンダとメガ進化同士でバトルをしたのがきっかけだ。
同じドラゴンタイプだが、メガボーマンダの火力は目を疑う程だった。
マッハ四を叩き出す高速飛行能力がなければ、あっという間に負けていた。
間抜けに鼻提灯を膨らませながら爆睡するボーマンダだが、非常にレベルが高い。

“ラティオス、ジバコイルと如何?”

“構わない。”

バクフーンに尋ねられ、ラティオスは頷いた。
ポケモンハンターに追われていた自分を最も気に掛けてくれたポケモンはジバコイルだ。
上手く息を合わせられると思う。
ラティオスの同意を得たエーフィとバクフーンがジバコイルを呼びに行った。
オーダイル、クロバット、そしてマニューラの三匹はバトルレコーダーの画面を確認しながら意見を交わしている。
ラティオスがジバコイルの弱点をカバー出来る技を考えていると、隣にいたスイクンが言った。

“皆が三ヶ月後に備えているな。”

“そうだな。”

ラティオスは返事をしてから気付いた。
スイクンは三ヶ月後≠ニ言った。
予知夢が現実になるのは四ヶ月後だ。
小夜やそのポケモンたちは三ヶ月後から別行動になるのを知らない筈だ。
ラティオスは冷や汗を掻いて硬直した。

“……………。”

“やはり一ヶ月前になれば此処を出るんだな。”

“……鎌をかけたのか。”

“如何だろうか。”

ラティオスがスイクンの顔を見ても、普段通りの澄まし顔だった。
しらを切っているが、間違いなく釜をかけただろう。
ラティオスは仕方なく諦めると、誰にも聞こえないように慎重に言った。

“エーフィは気付いているのか。”

“小夜すら気付いている。”

“…!”

“三ヶ月後というのは当然知らないがな。”

シルバーが別行動の為にこの研究所を出る事は、エーフィを始め、ボーマンダとバクフーンも気付いている。
スイクンは荘厳な声色でラティオスに言った。

“私が知った事を誰にも話さないで欲しい。”

“分かった。”

伝説のポケモン同士の約束だ。
二匹で目を合わせ、しっかりと頷いた。
すると、エーフィとバクフーンがジバコイルとゲンガーを連れてやってきた。
コンビを組むジバコイルは緊張気味に言った。

“ラティオス、宜しくね。”

“此方こそ。”

ラティオスの足枷にならないように張り切らなければ。
ジバコイルが密かに意気込んでいると、バクフーンが言った。

“さっきエーフィと話したけど、相手はスイクンとゲンガーで如何?”

“それ乗った!

スイクン、頑張ろう!”

“ああ。”

ゲンガーはスイクンの周りを嬉しそうにくるくると浮遊した。
スイクンと一緒にトキワの森からオーキド研究所まで帰った事がある。
それをとても懐かしい思い出に感じるのは、それ以降の日々が濃厚だからだろう。
スイクンとラティオスは再び目を合わせ、好戦的に微笑んだ。



2017.2.3




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