12-2

縁側で寄り添い合って過ごしていると、夜が耽ってゆく。
まだ暫くこのままで過ごしたい気持ちはあるけれど、煉獄さんには朝から炎柱として仕事がある。
私は煉獄さんの腕の中で顔を上げた。

「そろそろ寝ましょうか」
「うむ、そうだな」

抱き合っていた腕を解き、私たちは立ち上がった。
寝室に並んで敷かれているのは、二人分の褥だ。
二人で寝室に入り、私が襖を閉めると、煉獄さんに背後から強く抱き竦められた。
驚いた私は、体が小さく跳ねた。

「っ、煉獄さん?」
「俺は君と一緒に寝たいのだが」
「一緒…とは…」
「一つの布団で寝たい」

耳元で話されると、余計に心音が煩くなる。
私を抱き締める煉獄さんの腕に、心音と緊張が伝わっているかもしれない。
煉獄さんの声色は優しかった。

「大丈夫だ、今日は何もしない」
「今日は…?」
「俺も男だからな。
愛しく思う君を、いつかは抱きたい」

その台詞に、私は全身の熱が上がるのを感じた。
抱きたい≠ニいう言葉に緊張はするけれど、素直に嬉しかった。

「しかし今日は君の悪夢が心配だ」
「…もし、悪夢がなければ?」
「……」

悪夢がなければ、抱いていましたか?
私の思い切った問いかけに、煉獄さんは珍しく押し黙った。
困らせてしまっただろうか。
私を背後から抱き締める煉獄さんは、一体どのような表情をしているのだろうか。
沢山の間を取ってから、煉獄さんは口を開いた。

「君はどうだ?」
「え…?」
「もし……いや、すまない、忘れてくれ」

煉獄さんが訊ねたいことは分かる。
もし悪夢がなければ、抱かれても構わなかったのかと聞きたいのだろう。
煉獄さんは私を抱き締める腕に力を込めた。

「俺は本来、君との距離をゆっくり縮めてから想いを告白するつもりだった。
君の弱みにつけ込むような真似をしたくなかったからだ。
元から焦るつもりはない」

私を抱き締めていた腕が、そっと解かれた。
煉獄さんが私に背中を向けて、褥へ歩き出した。
何かが胸に熱く込み上げた私は、まるで引き止めるように、煉獄さんの右手を両手で握った。
煉獄さんが驚いた表情で振り向いた。

「那桜?」
「弱みにつけ込まれているだなんて思ったことはありません」

自分の気持ちを伝える時、普段の私なら恥ずかしくて俯いてしまうけれど。
今は真っ向から伝えたくて、煉獄さんと懸命に視線を合わせた。

「私は煉獄さんに惹かれて、想いが通じ合って、とても嬉しいんです。
だから弱みにつけ込むだなんて、言わないでください」

伝わって欲しい。
私が煉獄さんのことをどれだけ想っているのか。

「たとえどのような状況下で出逢ったとしても、私は煉獄さんに心惹かれたと思います。
煉獄さんのことが、本当に好きなんです。
煉獄さんになら…何をされても構いません」

全て言い切った途端に、唇を塞がれた。
それはすぐに離れたかと思うと、軽々と横抱きにされた。
私は今からどうなってしまうのだろうか。
褥に腰を下ろされたかと思うと、そのままゆっくりと押し倒された。
柔らかな枕に頭が沈むと、再び唇が深く重なった。
今までの優しい口付けとは違って、荒々しい。
私が息継ぎに吐息をついた時、煉獄さんは隙をつくかのように舌を入れ込んできた。

「ん…っ!」

煉獄さんの舌が、私のそれを口内で追い回した。
初めての感覚に戸惑ったけれど、煉獄さんに合わせて舌を懸命に絡めた。
温かくて、気持ち良い。
くちゅくちゅと鳴る卑猥な水音さえ、気持ち良く感じる。
煉獄さんの首に両腕を回して求めてみせると、煉獄さんはすかさず唇を離した。
口付けが終わってしまった寂しさを感じながら、間近で熱い視線が交わる。

「いいのか、このままでは本当に抱いてしまうぞ」
「構いません」
「怖くないのか」
「いいえ」

煉獄さんは何かを堪えるように眉を顰めた。
これは葛藤している表情だ。

「俺は君を大事にしたいというのに…精神修行が足りん…!」

煉獄さんは目を固く瞑ると、深く項垂れた。
そんな煉獄さんの頬に私が手を添えると、やっと視線が交わった。
今は、私を見て欲しい。

「あの…口付けを…」
「っ、君は…!」

噛み付くように唇を奪われて、温かい舌が滑り込むように入ってきた。
私はまだまだ不慣れながらも、それに応えた。
舌を絡め合う水音が頭に反響して、煉獄さんのことしか考えられなくなる。
煉獄さんは私の頬を撫でると、唇が触れ合ったまま言った。

「今夜は口付けだけだ」
「我慢しなくても構わないんですよ」
「…それ以上は言わないでくれ」

貪るような口付けが降ってくると、私はその気持ち良さに夢中になった。
私たちは互いに満足するまで、何度も情熱的な口付けを繰り返した。



2022.2.18





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