雪女との出逢い-3

サソリは待つのも待たせるのも嫌いだ。
そんな彼をデイダラは旦那と呼んでいるが、ヒルコの中身はこの女と同じ年齢の外見を保っている。
きっと今、彼は待ちぼうけて激怒しているだろう。

氷遁の血継限界というのは芸術性に溢れていた。
女が造り出した氷を爆破するのは、実に快感だった。
爆発によって粉砕された氷は太陽光を反射して煌めき、空気中で雪のように溶けてなくなる。
それはまさに、デイダラが芸術性を見出す美しく儚く散っていく一瞬の美≠セった。

デイダラは凍り付いた巨木の根元に身体を預けながら、出血多量と体温低下で意識が朦朧としていた。
敗因は何だろうか。
準備不足、女だからという油断。
そして何より、雪女は強かった。

もう駄目だな…こりゃ──

頭部から流れる血が右目に入り込み、視野が霞んで鬱陶しい。
氷世界の中で、寒いという感覚すらなくなってきたデイダラは、そっと目を閉じた。
意識を飛ばせば、もう二度と戻れないだろう。
芸術家として目標の一つだった究極芸術≠熬B成できていない。
うちはイタチと大蛇丸も殺せていない。
まるで後悔だらけの人生だ。
朦朧とする頭であれこれ考えるのをやめてしまおうと思った時、それを強制的に引き留められた。

「少しやり過ぎましたね」

頭部に当てられた両手から、冷んやりと心地良いチャクラを感じた。
これは医療忍術だ。
そういえば、角都は雪女のチャクラに癒しの能力があると話していた。
この冷んやりとしたチャクラの心地良さを実感する今、これが癒しの能力と言われるのも頷ける。
デイダラは任務の暗殺対象者から治療されるなどまっぴら御免だが、抵抗しようにも身体が動かない。

回復し始めた意識の中、デイダラは薄目を開けた。
戦闘の最中に黒衣のフードが脱げ、露わになった顔が間近にある。
雪女の顔はやはり美しく整っていて、これまでの人生で出逢ったどの女よりも別嬪だ。
氷を思わせる瞳に吸い込まれそうだし、透明感のある肌が雪のように白い。
見惚れてしまう程に芸術的だ。
あのビンゴブックの写真とは比較にならない程、この五年間で美しく成長していた。
手を伸ばせば触れられる距離にいるが、デイダラにそんな体力は残されていなかった。
周囲が氷世界ではなくなっている事にも気付かなかった。

女は戦闘の最中にも表情を一切崩さず、一貫して冷静だった。
笑顔の作り方を忘れてしまったかのような無表情が、氷のように冷たかった。
まるで蔑まれているように感じたデイダラは、戦闘中に苛立ったものだ。
しかし、今この瞬間が今日一番苛立っていた。

「…ふ、ざけんな…」

オイラにとって、この日は人生の汚点となるだろう。
任務の暗殺対象だった女に半殺しにされた上に情けをかけられ、とどめを刺されなかった。
挙げ句の果てには、医療忍術で治療される始末だ。
オイラに対する侮辱だ。
馬鹿にするのも程々にしやがれ、と思う。

意識が戻った時、其処に女はいなかった。



2018.4.7




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