誕生日デート 後編

プラネタリウムの上映中、隣に座る国光の肩に頭を預けた。
手を繋ぎながら、瞬く星を見上げた。
人工の星の筈なのに、本物みたいだった。
頭の片隅には華代がいた。
星が好きな華代はプラネタリウムは愚か、本物の星すら観られなくなってしまった。
そう思うと、胸が痛んだ。
プラネタリウムの後は、ビルの屋上から夜景を観た。
本物の寒空を見上げながら、ずっと国光の手を握っていた。

そして今、街路樹のイルミネーションが淡い蒼色に煌めいている中を二人で歩いている。
一年を通してイルミネーションを観られるこの場所に来るのは初めてだ。

「泣きそうだったな。」

『え?』

「プラネタリウムの時に、お前が…。」

周囲には色々な年代の恋人たちが疎らに歩いている。
そんな中、あたしは立ち止まった。

『気付いたんだね。』

プラネタリウムの上映中、唇を噛んで涙を堪えた時間もあった。
隠しておこうと思っていたのに。

『華代は星が好きなの、だから…。』

「もう言わなくていい。」

手を繋いだまま、身体を引き寄せられた。
国光のコートが温かくて、ぎゅっと抱き着いた。
頭を撫でてくれる手が心地良くて、心が自然と落ち着きを取り戻した。

『華代には楽しんで来てねって言われたの。

あの子は気を遣われるのが好きじゃないから。』

華代は自分のせいであたしの行動が制約を受けるのを嫌う。
親友のあたしはそれを理解しているつもりだ。
電話で行ってらっしゃいと言ってくれた華代は、あたしが楽しんでくるのを心から望んでいた。

『一緒に観に行ってくれてありがとう。』

「構わない。」

少しだけ、強くなれた気がする。
あたしは国光の背中をぽんぽんと叩いて合図すると、顔を上げた。

『行こう?』

「ああ。」

折角のデートなのに、何時までも哀しい顔を見せたくない。
二人で不二宅に向かって歩き始めた。
国光は何時もあたしの家まで送ってくれる。
あたしの門限は9時だけど、もうすぐ8時だ。
バスに乗らずにのんびりと歩きながら、何となく国光の腕にしがみ付き、ぴたっとくっ付いてみた。
今日は沢山甘えるんだからね。
国光はあたしを見下ろし、微笑んだ。

「可愛いな。」

『…え?!』

繋いでいた手を離した国光は、あたしの腰を軽く引き寄せた。
ぴたっと触れ合いながら歩いていると、ドキドキが伝わってしまうかもしれない。

「あの公園に寄ろう。」

『いいよ。』

あたしももう少し話したい。
お互いの歩調を合わせて公園まで歩いた。
少ない街灯に照らされている公園には、誰もいない。

『ジャングルジムに登っていい?』

「駄目だ。」

『今日は何の日?』

「…少しだけだぞ。」

わーい!
あたしはぱたぱたと駆け出し、身軽に登り始めた。
天辺まで登ると、其処に座って寒空を見上げた。
地表からの距離はほんの少しだけど、星に近付いた気がする。
すると、なんと国光が登ってきた。

『シュール…!』

国光は目をキラキラさせるあたしの隣に座ると、あたしの肩を引き寄せた。

「…スカート。」

あたしははっとした。
ジャングルジムに登っているあたしから視線を背ける国光が想像出来る。

『ショーパン履いてる…っていう問題でもないか。』

「やはり登らせなければ良かった。」

『もう登っちゃったね。』

クスクス笑ったあたしは国光の肩に頭を預け、目を閉じた。





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