超高速お断り-2

あたしの心とは裏腹に、空は晴々とした翌日。
国光とメッセージを遣り取りしながら、クラスメイトとお弁当を食べた。
竜崎桜乃ちゃんと小坂田朋香ちゃんとは特に仲良しの友達だ。
他の友達も合わせて、何時も六人で賑やかにごはんを食べている。
食欲が取り柄のあたしなのに、今日はお箸の進みが遅かった。

お昼ごはんの後、やたらと緊張しながら例の女の子の教室まで向かった。
名前が分からないから、ドアの近くいた男の子に女の子を呼んで貰った。
廊下で待つあたしの元へやってきた女の子は、あたしを見て目を丸くした。

「不二さん…?」

『ちょっと時間いいかな?』

女の子は緊張気味に頷き、あたしの後ろをついてきた。
向かうは一階の渡り廊下。
階段を降りようとした時、腕を組みながら壁に凭れている人物を発見した。

「愛。」

『国光…?!』

一階の渡り廊下を待ち合わせ場所に指定したのは国光の筈なのに、如何して此処にいるの…?!
あの女の子がいるのに、国光はあたしを呼び捨てにしたし、あたしも国光を呼び捨てにしてしまった。
はっとして後ろを向くと、女の子は好きな人を前に顔を真っ赤にしていた。

「手塚先輩…!」

国光は女の子を一瞥すると、あたしに手を差し出した。
その意味が分からず、あたしは口が半開きになった。

「行こうか。」

『う、うん…?』

そそくさと国光の元へ歩み寄り、恐る恐る手を伸ばしてみる。
すると、その手をグッと引かれた。
隣に引き寄せられたかと思うと、その手は離されてしまった。
すぐ隣を歩けという事だろうか。
偶然廊下を通った1年生にガン見され、あたしは恐縮した。
国光は女の子が後からついてくるのを確認してから歩き出した。
あたしは国光と隣同士で階段を降りながら、ムッとして国光を見た。

『学校なのに……何考えてるの。』

国光は何も答えないまま、優しい目で見つめてくる。
思わずドキッとしてしまった。
こんな状況でも、やっぱりかっこよくて素敵だ。
目的地に到着すると、あたしは国光に向き直った。
此処は人通りが少ないとはいえ、昼休みだから誰も通らないとは保証出来ない。
特に今は女の子が一緒だから、見られたら変に思われる。

『じゃあまた放課後にね。』

「ああ。」

国光はあたしの頭に手をぽんと置いた。
またそういう事を…!
女の子の顔を見る事が出来ないまま、あたしは全力ダッシュした。
元来た階段を駆け上がり、教室に到着した時にはぜーぜーと言っていた。

―――心配なら何処かで聞いていても構わない。

そんなの無理だ。
勇気を出して国光に告白した女の子にも申し訳ないし、あたしは国光を信じている。
スマホが振動し、ふと画面を見た。

―――――
もう終わったから、心配するな。
―――――

『え、超高速…!』

本当に一瞬で終わらせたんだ。
ドアの前で立ち尽くしていると、声をかけられた。

「あれ、愛早くない?」

『朋ちゃん。』

小坂田朋香ちゃんは越前君をリョーマ様と呼んでいて、如何やら一目惚れだ。
キューピッドになりたいあたしだけど、桜乃ちゃんと朋ちゃんの何方を応援すればいいのか困惑している。
何方かと言うと、桜乃ちゃんの方を応援していたりする。
その桜乃ちゃんもあたしが心配だったのか、早足で近寄ってきた。
朋ちゃんはあたしの両肩を掴み、ガクガクと揺さ振った。

「大丈夫だったの?!

手塚先輩は?!」

『ちょ、声が大きい…!』

強く揺さ振られると、頭がぐるぐる回る。
二人にはラブレター事件を話してあるんだ。
あたしは自分の頭を真っ直ぐに立て直すと、小声で言った。

『大丈夫、だと思う。

また放課後に一緒に帰るから、その時に話す予定…。』

「手塚先輩なら大丈夫だよ。」

『ありがとう、桜乃ちゃん。』

笑顔がぎこちなくなってしまったけど、昨日よりは気が楽だ。
朋ちゃんが「あたしも何時かリョーマ様と…」だなんて言っている横で、桜乃ちゃんが切なげな表情をしている。
あたしはさり気なく話を変えると、三人で席に戻った。



2017.1.21




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