逢って欲しい人-2
「おっス、愛ちゃん!
待ってた…ぜ――って、手塚部長!!?」
「桃城、突然すまないな。」
『桃先輩、急にごめんなさい。』
桃城宅の玄関のドアを開けた桃城だが、愛の隣にいる俺の姿に相当驚いていた。
桃城が愛と俺を交互に見ながら口を半開きにしていると、桃城の背ろから人が現れた。
「お兄ちゃん、私がさっき愛から聞いたの。
その時に是非一緒に来てって言ったんだ。」
「華代…!」
華代と呼ばれた人物は廊下の壁に手で触れながら、視線を斜め下に落としたままだ。
桃城が慌ててその手を取り、しっかりと支えた。
その時、俺はその動作の意味が分からなかった。
「愛、いらっしゃい。
手塚さん、初めまして。
愛からよく聞いています。」
愛が俺の隣で照れ臭そうにしている。
桃城はますます訳の分からないといった顔をしている。
「桃城華代と申します。
兄と愛がお世話になっています。」
片手を桃城の腕に乗せながら、桃城の妹は頭を下げた。
依然として視線を斜め下に落としたまま、親友の愛と兄の目すら見ない。
俺の中に一つの仮説が浮かぶ。
「部長が来るとは…!
と、とりあえずお茶、お茶…!
リビングって綺麗だったっけ…?!」
桃城が慌てふためいていると、愛が慣れた様子で玄関に入った。
『お茶はあたしが淹れますから、桃先輩は手塚先輩の案内をお願いします。』
「お、おう。」
『キッチン借りますね。
華代、行こう!』
「うん。」
愛は桃城の妹の手を取り、ゆっくりと中に入っていった。
相当慣れているようだ。
キッチンを気さくに使用する程の仲らしい。
「部長、とりあえず中へどうぞ!
今は俺と華代しかいないんで遠慮なく!」
「すまないな。」
俺は桃城宅に入った。
壁紙が真っ白で明るい玄関は綺麗に整頓されている。
そして傘立ての隣に立て掛けられているのは、白くて長い杖。
やはり、俺の仮説は正しいようだ。
桃城が用意してくれた黒のスリッパに足を入れた。
「部長、何で部長が…?」
「それは後で話そう。」
「俺何か悪い事しました?!」
「さあな。」
俺を勘違いさせた罰だと思い、適当に答えた。
それが桃城にとってかなりのダメージだったらしく、顔が真っ青になった。
しかし、桃城は更に質問を飛ばした。
「それに、何で愛ちゃんと一緒なんですか?
確かに生徒会長と書記ですけど…。」
「それも後で話そう。」
「部長、何か怒ってます?」
「さあな。」
「……。」
真っ青を通り越して青白くなった桃城だったが、俺をリビングまで案内した。
2016.12.7
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