日本とドイツの距離

日本とドイツというのはこれ程まで遠いのか。
愛がドイツへ発ってからというもの、毎日そう思っていた。
時間を合わせるのが難しい電話は短時間しか出来ない。
メッセージを遣り取りしていても、顔を見たくなるし、声を聞きたくなる。
時折、メッセージの内容を見返した。

―――――
さっき買ったドイツのバウムクーヘン、すっごく美味しいよ!( ゚Д゚)ウマー
―――――
ドイツはバウムクーヘンが有名だからな。
―――――
お土産に買って帰る!
一緒に食べよう?
―――――
なら、早く帰って来い。
―――――
まだ2試合あるもん…orz
―――――

些細な遣り取りさえ飽きないし、大切に思う。
愛のお陰で様々な顔文字を覚えた。
俺は会話が得意な人間ではないが、愛の前では違う。
話題に事欠かない愛はリズム良く話題を振ってくれる。
電話でもメッセージでもそうだ。
そんな愛が海外へ行ってしまうと、物足りなさがある。
俺は愛に心底惚れているんだと思い知らされる日々だった。

愛がドイツへ発ってから1週間。
部活が終わってから間もなく、何時も通りの電話が来た筈だった。
しかし、愛の様子はおかしかった。
無理に絞り出している声が心配になり、初めてビデオ通話を提案した。
それを拒否され、終いには電話が繋がらなくなった。
大丈夫かと送ったメッセージも既読にならず、返信はない。

―――……ありがと…おやすみ…。

心配性だと何度言われたか分からないが、こうなれば心配するしかないだろう。
そう文句を言ってやりたいが、連絡がつかない。
急いで帰宅し、自室に到着するや否やパソコンを開いた。
愛が出場する国際大会のHPにアクセスすれば、決勝戦が生中継されている筈だ。

試合が終了している…?

もう終わったというのだろうか。
試合時間は20分もない。
記載されている結果を見ると、ストレート勝ちだった。
すると、スマートフォンに愛から連絡が入った。

―――――
さっきはごめんね
でもちゃんと勝ったよ!
―――――

咄嗟に電話をかけるが、出なかった。
時差の関係もあり、明後日まで愛に逢えない。
嫌な予感がする。
電話を一方的に切った事や、連絡がつかなくなった事は責めない。
だから無事に帰ってきてくれ、愛。



2017.1.29




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