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『じゃあ、行ってくる。学校とじいちゃんの病院寄った後で帰るから18時くらいになると思うけど、冷蔵庫に昨日のカレーの残りとか入ってるし、適当に食べてていいから』


あと風呂もと言って見送る名前に風呂の場所と着替えの場所を指さした悠仁は、そう言って出て行ったのだった。


「お風呂…」


悠仁に言われ、ようやく気がついた。

ここ最近逃げ回っていたせいでろくに着替えても、風呂にも入っていなかった。

こんな状態で彼のベットを借りていたのかと思うと申し訳なくて、名前は風呂と着替えを借りた後、シーツと布団も洗濯してベランダに干しておいた。


「虎杖、悠仁…」


彼は暴走した名前の事を見ても引いたりせず、わざわざ気を失わせてまで名前のことを部屋に置いてくれていた。

また襲われるかもしれない可能性があるのにも関わらず、自分がいない間も好きに過ごしてていいよ、と。
挙句の果てには俺が悲しむからもう死ぬなんて言うな!と怒るだなんて、一体どこまで底なしに優しいというのか。


「…時人の他にもまだ、あんな優しい人がいたんだ」


そう呟き、嬉しそうに微笑む名前。

けれど、すぐにまた悲しそうな顔になって俯いた。


「悠仁が帰ってくる頃までには…出ていかないと」


追われる身である自分がここにいれば、間違いなく彼にも危害が及んでしまう。

自分の事を助けてくれた悠仁の身に危険が迫る事だけは、何が何でも避けなければいけないと思った。


「でもその前に少し…カレー食べようかな」


現在は一人暮らしという事なのであれば、きっとそのカレーは彼が作ったものなのだろう。

かつて一緒にいた時人もよく名前に自分の作った手料理を食べさせてくれた事を思い出した名前は、冷蔵庫の方へ向かってカレーを取り出したのだった。













「!!」


夕方になり、乾いたシーツと布団をセットし直したまでは良かったのだが、気がついたらそこで寝てしまっていた名前。

けれど、名前が咄嗟に目を覚ましたのにはもっと別の理由があって。


「この気配…!!」


ここ最近やたらと感じるようになっていたその気配。

それと同時、自分の中でまた“呪力”が膨らんでいくのが分かった。


「ダメ…!!ここでは…!!」


カタカタと震える自分の手が伸ばす先には、捨てても捨てても何度も自分の前に姿を現してくる妖刀、村正があった。

けれども名前は掴んだその刀を鞘から振り抜くのだけは全力で阻止し、壁にかかっている時計を見上げる。


「なん、で…」


時計の針が指し示す現在の時刻は19時過ぎで、悠仁が帰ってくると言っていた18時をとっくに過ぎていた。

この気配といい、悠仁の予定より遅い帰宅といい。

彼が自分と関わってしまった以上、決してこの事が無関係とは思えなかった。


「…っ! 無事でいて悠仁!!」


ベットから飛び降り、素早く玄関へと駆ける名前。

名前が悠仁の家を飛び出して気配の感じる方へ走っていると、そこは『杉沢第三高校』と書かれた高校の前だった。


「…ここって、」


それは確か今朝、悠仁が言っていた彼の通っているという学校名ではなかったか。


「そんなっ、やっぱり…!」


やっぱり自分が巻き込んでしまったのかと唇を噛み締め、校舎の中へと足を踏み入れる名前。


ガシャン!!


すると突然校舎三階の窓が割れ、呪霊と思わしき怪物が飛び出してくるのが見えた。


「え!?」


けれども飛び出してきたのは呪霊だけでなく、人間もで。

そしてそのうちの一人を見て目を見開いた名前は、反射的に自身も地を蹴って飛び上がっていたのだった。


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