ドサッ!!

「…ッ!」


ジンのプライベートルームである、ガレージ直結のワンルームにて。

ジンによって部屋の中央にある絨毯の上に突き飛ばされた名前は、寸でのところでそこにある足の短い机にぶつかるのを回避した。


「妙な事考えても無駄だぜ」

「?! やめっ...!」


ジンは片手で名前の顎を掴むと、もう片方の手で机上にある酒のボトルを掴んだ。

瞬時にその意図を理解した名前が顔を背け、両手でその動きを止めようとするが─── 敵わない。


「酒は好きか?」


この状況で頷くほど愚かな奴もいないだろうに…
分かっていてそれを問うジンの何と鬼畜な事か。


「クククッ」

「… ッ!…ジンっ! やめっ…んっ!んぅッ…!!」


ジンはボトルの口を無理矢理名前の小さな口に捩じ込むと、原液のまま容赦なくその中身を名前の喉へと流し込んだ。


「 ……ッぅ! …んっ、んんッ…!!!」


名前が拒絶しようとするよりも早くその中身が流れ込んできてしまい、あっという間に傾けられていく酒瓶。

飲みきれなかった分は名前の口端から溢れ、床へと染みを作るが、ジンはそれに構う素振りすら見せず、ひたすらその中身を傾け続けた。


「ゲホッ!!…ゴホッ…!!」


中の液体がほとんどなくなったのを確認すると、ジンは名前の口からそのボトルを離し、元の位置へと戻した。

ボトルのラベルには《 ゴードン ロンドン ドライジン》とあり、クセは少ないが味は比較的強く、度数は40とあった。
そして名前は今、そのほとんどをストレートで1本空けさせられたのだ。

先ほどの倉庫でキールがジンの目を盗んで名前の怪我の手当をしてくれというのに、今のジンの行動のせいで至る箇所から鈍い痛みが名前を襲った。


「……っ!!」


そして多量なアルコールの摂取は名前の思考を、動きを。急激に奪い、麻痺させていった。


「…ぁっ、」


ジンが掴んでいた名前の顎から手を離すと、名前はぺたっと床に手をつき、耐えるように両目を瞑った。


「はっ、…っう…!!」


喉から胃にかけてが燃えるように熱く、ジンが目の前にいるこの状況から逃げ出したいのに、体が鉛のように重くて重くてたまらなくて。
グラグラと定まらない視界から、名前は片腕で瞳を覆って歯を食いしばった。

ジンは横目でそんな名前の体に酔いが回るのを眺めつつ、クローゼットに自身の着用していた帽子とコートを掛ける。


「……ッのっ、鬼、畜…!!!」


徐々に回り始めたお酒からままならない呼吸の合間。
絞り出すようについた名前の悪態にジンは喉をならして歩み寄ると、自身も名前に飲ませた酒を口にと含んだ。


「……やぅッ!」


動かない体で尚もジンから距離を取ろうとガレージの方へと這う名前の体を容易く捕らえると、ジンは自身のベッドへと放った。

そして衝撃に顔を歪める名前の上に跨ると手早くキャミを押し上げ、露になった名前の胸の先端に勢いよく噛みつく。


「ぃッ!!!…ぃっ…!!た!やめっ、離せよジン……!!!」


片方の突起は指でつまみあげられ、もう片方にはジンの歯が痛いくらいに食い込み、名前の両目からはボロボロと涙が溢れた。


「もっ…やめっ、……ッあああぁっ!!!」

「あ?気持ちイイの間違えだろうが?」

「…ッ…...!!」


ショーパンを脱がそうとするジンの手を阻止しようとするも、所詮は酔いの回った体。
案の定名前の抵抗はあっけなく躱され、ジンによって力強く下着ごと剥ぎ取られてしまった。


「なんっ、…で……っ」


悔しさとやりきれなさから潤んだ瞳で反抗的に睨みつけてくる名前に、ジンの背が喜びからゾクリと震えた。

あのお方からあまり手荒な事は控えるようにとの達しがあった為、傷が残る事には注意を払わないといけなくなってしまった事は残念だと思った。

でなければ泣いても、喚いても。容赦なく追い詰めて、痛めつけて。気を失うまで可愛がってやれるというのに…



「…...好きっ、でも…っない、っ相手を、」

「あ?」

「よくっ……抱けんな!!!」


視線を下げれば先ほどのそれとは異なり、反抗的な光の中に僅かな侮蔑を含ませた名前の視線とぶつかった。

力も入らず、頭も回らず。
ここで反抗的な態度を取れば取るほど酷く扱われる事は明白だというのに、最後まで抵抗をやめない名前。

それをなんとも哀れで、同時に美しいのかと思った。だから、


「…クッ。抱けるさ」

「っあッ!!」


ジンは優しく名前の頭に手を滑り込ませたかと思うと、そのままグッとその髪を掴んで持ち上げた。


「男が愛だの恋だの以外で女を抱く時ってのはなァ…」

「 ......やめッ...!!」


ガリッ


「 …っぅ!」


ジンは名前の耳元に唇を寄せると、その軟骨に鋭く歯を立てた。


「征服欲だよ…ククッ!! 勝ち目のない男の下で組み伏せられ、」

「…ひぅっ!」

「あられもない声をあげさせられて、」

「…やっ!」


髪を掴まれたまま耳から流れ出る血を舐められ、再度胸の突起を捩じられ…抵抗も、痛みも。


「その全てを“男”の絶対的な力によって握られている女の─── なんと無力な事だろうな」

「!!」


プライドも何もかもがその前で崩れていく、無力な女のその姿。

特に名前のように痛めつけても、組み伏せても尚、最後まで抵抗をやめない女は最高だ。


「夜はまだまだこれからだぜ…名前?たっぷりと啼かせてやるよ」


耳元で囁くように。
地獄に突き落とすように嗤って、ジンは名前のその首筋に朱い華を咲かせた。



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