「好きだ!ナマエ!!」
「私は嫌いよ、ポッター!だからついてこないで!」


嫌い>>>>好き


ああもうどうにかして、この後ろにぴょこぴょこついてくる男。いくら勉強が出来たってクィデッチが上手くったってみんなに人気があったからって、そんなの関係ない。お願いだから、私の後ろにはり付くのをやめて。―始まりは二日前。彼が落とした羽ペンが汚れていたから洗って届けてあげたら、なぜか凄く感激されて今に至る。どうやら彼に気にいられたみたいだった。好かれるのは嫌いじゃないけど、流石にコレは異常。だって私、スリザリン生だから。

「ねえ、ナマエ!次は合同授業だね。隣に座ってもいいかい?」
「ごめんなさい、私セブルスと座るから」
「何てことだ!君はあんな奴と友達なの?危ないよ!!」
「危ないって…あなたといたほうがよっぽど危ないわ。…それじゃあさよなら」

後ろから私の名前を叫ぶ声が聞こえた。迷惑、スッゴく迷惑。苛立ちから足早になり、すでに席についていたセブルスの隣に乱暴に腰掛けた。一部始終を見ていたのか、彼の眉間にシワが寄っている。

「セブルス、顔が恐いわ」
「…すまん」
「謝らなくて良いのよ」

もう、と呟くとセブルスの顔が少し和らいだ。セブルスといるときは唯一ポッターから離れられる時間で、心穏やかだった。それなのにポッター!セブルスが危ないですって…一体なに考えてるのかしら。思えば彼は入学した時からいけ好かない奴だった。グリフィンドールに配属された彼の第一声は「僕がグリフィンドールなのは当たり前なのさ、天才だからね」だったのだ。ばかばかしい、思い出しただけでイライラする。

「ナマエ」

急にセブルスに声をかけられて我に返った。彼が自分の眉間に指をつけて、トンと軽く叩いた。

「あっ…ごめん」
「謝るようなことじゃない」

珍しくセブルスがくすりと笑って、私も笑顔になった。

「ナマエ、大丈夫かい?」

教室を出た瞬間に、彼。それはもうどこからわいて出てきたのかというほど華麗に現れた。

「ポッター、言ったでしょう。私に近づかないで」
「ついてくるな、とは言っていたけど近づくなとは言われてないよ」

困ったような表情を浮かべるポッターに、更に言った。

「じゃあ、今言うわ。近づかないで」
「ナマエ!そんな…」

授業帰りの生徒が行き交う廊下に嘆く声が響く。でも彼はそれ以上追ってこなかった。昼食の時間になりセブルスと広間に向かうと、いつものように飛びついてくるポッターの姿はなかった。悪戯仕掛け人と呼ばれる彼の友人と何か話し合っているようで、こちらをチラリと見てすぐに目をそらした。―なにか引っかかった。それまでにはない感情、なにか…なにか。

「どうした?」
「いいえ…何でもないわ」

奇妙な違和感を感じながらも席に着いた。目の前にあったトーストを一枚手にとり、ジャムを吟味する。いちごジャムを手にとって薄くトーストに塗り始めたとき、セブルスがティーカップを口につけて言った。

「グリフィンドールの奴らがまた馬鹿なことをしている…」

振り向くとグリフィンドールのテーブルでシリウス・ブラックが金色に光る球体を持ってニヤニヤしていた。隣ではポッターがなにか必死に抗議している。ブラックはそれを軽く手であしらい、その球体をスリザリン側に振りかぶって投げた。その球体は弧を描いてまっすぐこっちに向かってくる。セブルスを狙ったんだ、とっさに思い避けるにも避けられずそれが飛んでくるのをスロー再生のようにゆっくり見ていた。

「危ないナマエ!」

ポッターが叫んだ。スリザリンとグリフィンドールの間にはハッフルパフのテーブルがある。椅子を踏み台にポッターが飛び上がった。金色の球体を空中でキャッチし、体勢を崩して椅子と椅子の間に肩から着地してしまった。肩の痛みに呻きながらも彼は全力で先ほどキャッチした球体を、青空が映る天井に思いっきり投げた。小さな爆発で球体は粉々になった。―あれが私たちにぶつかっていたら…?そう思うとゾッとした。

「ポッター!大丈夫…?」

あたりがざわつき始めた。彼はいまだにしゃがみこんで肩を押さえていた。彼の顔が苦痛に歪んだのを見て、ひどく不安にかられる。

「ああ…大丈夫、心配しないで…。ナマエは怪我してないかい?」
「私は平気よ…ああ、あなたって本当に…」
「馬鹿…かい?もともとこういう性格だから仕方ないのさ」

彼が力なく笑う。私の隣に座るように促すとためらいがちに腰かけた。セブルスが呆然と見つめている。

「それよりさっきはごめんよ、君の友達のこと悪く言って…。それに君に近づいちゃったし…」
「ポッター…」

なんてまっすぐ何だろう、彼は。

「ジェームズって、呼んでくれるかい?」
「ごめんなさいジェームズ…」

私あなたをたくさん傷つけた、呟くように言うと彼が笑顔で言った。

「僕また君と話してもいいかな」

もちろん、という私の言葉は聞こえなかったかも知れない。私がジェームズに抱きつくと、彼が怪我をしていないほうの手で頭を撫でてくれた。


嫌い>>>>好き


(ナマエ!好きだよ!)
(ジェームズ、ここ廊下よ)
(じゃあ続きは図書館で、)


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