そもそも誰かが己の罪を救済してくれるなど、浅ましい考えだ。

もう一度、君に

ホグワーツを卒業して早一年が経つが、私は未だに君を忘れられないでいた。記憶に残るナマエの濃い色の瞳が私の目を捉えて離さずに、君はいつまでもそこにいる。

(ルシウス先輩)

いつまでも記憶の中で色褪せないナマエの声色で囁かれるのは私の名前だ。姿と同じように声までもがはっきりと思い出され、響く。

(さよなら、ルシウス先輩)

君があの時笑っていたら、私は君への想いを忘れることが出来たのだろうか。美しい思い出として心の奥底にしまい込むことは、出来たのだろうか。それとも、ナマエが流した暖かな涙の味を忘れられれば、君のことも何もかも忘れられるのか?薄暗い道を歩き始めていた私は、彼女がいる燦々と輝く太陽の下には引き返せない地点まで来ていた。既に闇に目が慣れてしまって、ナマエのいるその場所を直視する事すら出来ない。

(私将来、闇払いになりたいんです)

そう言ったナマエの凛とした目を、今でも覚えている。彼女はいずれこの暗闇を自信の光で照らしながら突き進んで来るだろう。そして杖を抜き、私と対峙する事になる。

嗚呼、そうなったら私は?

私は彼女に躊躇いもなく杖を抜き、おぞましい呪われた魔法を唱えることが出来るのか?彼女の華奢な肢体が空を舞う。激しい音と共に床に打ちつけられたナマエは、その衝撃を感じることなく横たわり動かなくなるだろう。そんなイメージを何度想像したことか。
自分がまともな思考をしているとは思わない。その思考は自分の罪を彼女に裁いてもらう事を望み、更に罪を重ねようとしている。罪を重ねれば重ねる程、ナマエに近付けるような錯覚に陥るのだ。もう一度彼女に……会いたい。敵対する者同士としてでは無く、あの頃と変わらぬ自分とナマエの姿で。叶わない望みだというのに、幾度となくそれを願った。だがしかし、私は救いようのない罪をこれからも重ねていくだろう。妻を娶り、私の血を受け継いだ子供が産まれ、罪の連鎖は続いていく。恐らくは……ナマエと再会し、その連鎖を断ち切られるまで。私はその日が来ることをどうしようもない程に望んでいる。


もう一度、君に


この罪の連鎖を辿れば、君に会える。私の歪んだ思考はいつしかそんな愚かな希望を創り出していた。そう思い込む事でこの罪の痛みさえ、堪らなく愛しく感じるのだ。



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