ブレーズの馬鹿!
もう知らないっ
at last!彼をこらしめるにはとりあえず目には目を、
ブレーズ・ザビニと喧嘩した。と言っても私が一方的に怒鳴り散らしただけなんだけど。だって私たち付き合ってはいないけど誰の目から見ても恋人同士なの。彼からの愛してるなんて腐るほど聞いたし、キスもした。ただ、好きって言われてないだけで。(私の考えじゃ好きって言われてないのに恋人同士だって言うのはおかしいのよね)親友のパンジーだって私たちのことをどこからどうみても恋人同士だって言うし、違う寮のハーマイオニーやパーバティにでさえ正式な恋人同士じゃないってことで驚かれた。なのに喧嘩した理由?それは彼が煮え切らない上に女の子をひょいひょい乗り換えるから。勿論最終的には私に落ち着くしいつも一緒にいるけどそれが余計に腹立つ。だから言ってやったの。
「ブレーズの意気地無し!」
彼もカチンときたのか応戦してきたけどそれを一蹴して逃げた。聞こえは悪いけど、口喧嘩じゃブレーズには勝てないから。
「どうするの、ナマエ…ブレーズ怒ってたわよ?」
大広間で昼食を食べているとき、パンジーが心配そうに聞いてきた。
「知らないわ、あんな人。それに私だって怒ってるの」
いつもはブレーズが向かい側に座っているけど、今日はノットが座っている。彼にはいつもブレーズへの愚痴を聞いてもらっていたから気にも止めなかったけど、その隣の隣の隣に座っているブレーズはそれが気に入らないみたい。に、見える。と言うかブレーズの隣には喧嘩の大元とも言える女が座ってるんだけど…
「私なんかいなくてもあちらはあちらで楽しそうですし!」
近くにあったベーコンをざくっとひとつき。パンジーの向かい側に座っていたドラがびくりと肩を震わせたのはきっと気のせい。
「落ち着けよナマエ」
ドラコが溜め息をついた。それにパンジーがすぐに反応した。
「そうよ!この先ずっとこのままじゃ私たちもやりにくいわ!」
何を、と口に出しそうになったけれどやめた。ノットもしきりに頷いていたから。
「…もう、いっそのこと付き合っちゃおうか」
ぽつりと呟くと遠くから飲み物を吹き出したような音が聞こえた。
「付き合うって、ブレーズと?」
パンジーがキラキラとした目でこちらを見つめてきたけど、否定の意味で首を振った。
「ノットと」
今度は先ほどと同じ方向からカップが落ちて割れた音が聞こえた。
「あ、あのさ…ナマエ?ノットって…」
「あなたのことよ、セオドール」
初めて呼んだノットの名前。なんとなくセオドールって呼びづらかったんだよね。この機会に名前で呼び出すのもいいかな。あれ、ノットが赤面してる?
「なに考えてんだお前は!」
突然聞こえた怒声はノットのものではなく、ドラコのものでもなかった。ついでに言うとドラコの腰巾着でもない。…ブレーズの声だった。
「ブレーズ?ちょっ…!」
顔がまるで般若。うん、例えが悪いかな。般若まではいかない。なまはげくらい。彼は怒っている、それもかなり。なまはげの様な形相で近づいてきた彼は私の手をガシッと掴んで(抵抗したけど無駄だった)文字通り広間の外に引っ張り出した。そして急にしおれた(疲れるなら怒らなきゃ良いのに)。きっと普段あまり感情を面に出さない彼のことだから、爆発してすぐに疲れてしまったんだろう。しょうがないなあ…
「それで?私を食事中に引っ張り出すんだから余程のことよね?ブレーズ」
ちょっとキツいかも知れないけど、彼にはそれくらいが丁度良い。じゃないとブレーズはこのままずっと喋らない(=私の朝食がなくなる)。
「あー…うん」
随分と迷って、ブレーズが顔を上げた(あ、泣きそう)。
「つまるところ僕は、君が、好きなんだ」
「…ブレーズっ!」
それが言い終わるか終わらないかのうちに私はブレーズに飛びついた。ブレーズが慌てて抱き止めてくれて、久しぶりに彼の温もりを感じる。ぎゅうと力を込めると彼が私の頬に唇をよせた。
「許してあげる」
「もう浮気しないよ」
「あら、してもいいわよ?」
「え?」
「だってあなたは私の彼氏だもの!」
at last!目には目を、意図的じゃなかったんだけどな。まあいっか