彼から手紙が届いた。夏のきっと一番暑い日。マグルの世界で暮らしている私に配慮してか、郵送で送られてきた。彼のお兄さんなんていまだにお構いなしにフクロウを送ってくるのに(本音を言えばこちらの世界は魔法界から切り離されてるから、少し嬉しかったりするのだけど、それは内緒)。純潔名家の家紋が押されて閉じられている手紙を丁寧に開くと、見慣れた細やかな字が並んでいた。ナマエ先輩へ、と書かれた文をそっと指でなぞる。二人とも卒業したのだから先輩なんて呼ばなくて良いのに。彼らしいと言えば彼らしいのだけれど。ふと、しばらく会ってないなと思い浅い溜め息をついた。マグルの世界に暮らしていると言っても、会おうと思えば会えるのに(ジェームズと先週会ったし)。一文一文触れながら読んでいく。良かった、彼は元気にしているみたい。けれど、その指が無意識に止まった。突然文字に表された微かな動揺。その文章を凝視しても、なにも起こらないと分かっていてもそうせざるを得なかった。(もしまた会えたら)何気ない一文。それなのになぜか、手の震えが止まらない。

(もしまた会えたら、笑顔で迎えて下さい)

早く彼に会いたい、会わなければいけない。そんな気がした。でもそれは永遠に叶わないことになってしまった。彼がそれから三日後に、行方不明になったという知らせが届いたから。


小さな物語の終焉
さよなら先輩、お元気で。最後にあなたの笑顔がもう一度見たかった。


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