※バトロワパロ注意。フリントが酷い。
そしてゆるやかな終焉へ「本日の犠牲者は、……――」
丁寧で無機質な声がスピーカーから流れて、今日の犠牲者の名前を淡々と読み上げた。恐らく闇の帝王の思いつきで始まったこのゲームは、至ってシンプルな殺し合いだった。みんなで殺し合って、最後に一人だけ生き残った者は歓迎されて死喰い人になる。友達や愛する人を失い、理性をなくした者は怒りや恨みに駆られ立派な殺戮者に育つと言うのが彼らの持論だ。最初は、怖いと思った。今でも怖いと思うけど、その時は友達や恋人を失うのが怖かった。それなのに、一日一日過ぎるごとにその恐怖は自分の命を失うことに向けられた。自分の命を守るために、必死に杖を振った。その魔法は決して人を殺めることはなかったけど、多くの緑の閃光とぶつかった。相殺、また相殺。幾度と無く飛び散る火花を浴びた。
「オリバー・ウッド、」
聞き慣れた名前が放送された。同じグリフィンドールの友達、オリバー。クィディッチが大好きだった彼。寝ても覚めてもクィディッチの話をしていた彼が、少し羨ましかったのに。自分の大好きなことに精一杯情熱を注いで、彼はいつでも輝いていた。
「本日の犠牲者は六人でした」
ブツリ、と機械音が途切れた。良かった。彼はまだ死んでない。パーシーは生きてる。あれほど優等生だった彼が簡単に死ぬはずがないと分かっていても、犠牲者が増える度に心がざわついていた。ほっと息をついたのもつかの間、背後の草がかさりと音を立てた。振り返る暇もなく背中に杖が突きつけられた。
「こんばんは、ナマエ」
聞き慣れたその声は、マーカス・フリントのものだった。クィディッチのスリザリンチームキャプテン。卑劣な作戦を好んで、いつも相手を見下しているような男。心臓がどくりと揺れた。
「今の放送を聞いたか?ウッドが死んだとよ」
楽しそうに笑う声が響く。
「誰が殺ったと思う?」
嫌だ。そんなの聞きたくない。……オリバーがまさか、
「俺だよ」
私の耳元でフリントは愉快そうに笑う。気持ち悪い、気持ち悪い。ひどい嫌悪感に襲われ、怒りが私の全身を包み込んだ。フリントが油断した一瞬、隙を狙って杖を抜く。
「俺とやる気か?」
「やめろナマエ!」
エクスペリアームズ!とどこから赤い閃光が飛んできてフリントに当たった。杖と共に吹っ飛んだフリントは木に当たって気絶した。声のした方向を見ると息を荒げたパーシーが立っていた。
「パーシー……?」
彼が杖をフリントに向けたまま近寄ってくる。いつもの落ち着いた聡明な雰囲気はなく、それでも彼はいつも通りで。
「大丈夫かい、ナマエ」
「わ、私は大丈夫。あなたは?」
少しね、と左腕をあげて見せた。切り傷だろうか。ぱっくりと裂けた傷口に乾いた血が光っている。
「大変!」
駆け寄って傷口を手当てしようとするとパーシーが首を横に振った。彼が呟くように言う。
「これくらい、彼らに比べたら」
彼ら、とはオリバー達のことだろうか。苦しそうな彼の表情を見てふと思い出した。
「ここから離れよう」
気絶したフリントを一瞥すると彼は歩き出したので、私もそれにならい歩いた。月明かりに照らされた彼の背中には、いつもようなの自信は無く、ただ感じられるのは焦り。足取りは重いけれどまっすぐ道を進んだ。たどり着いたのは大きな湖。広い湖面に小さな月が浮かんでいた。
「ナマエ、」
立ち止まったパーシーが、ふと口を聞いた。
「僕、君のことが好きだった」
きり、と胸が痛んだ。今このときこんな場所じゃなかったら心から喜べたのに。
「私もよ」
彼の左隣に並んで湖を見た。静かすぎるくらい静かな夜だった。
「君を幸せにしてあげたかった」
眉間に皺を寄せて彼がうつむく。その左手を取って、両手で包み込むと小さく握り返された。
「私はあなたといられたら、いつでも幸せ」
彼の顔を見上げて微笑むと、彼も照れたように笑った。
「僕と一緒に死んでくれるかい?」
私達に残されたたった一つの選択が死ぬことなんて、
「喜んで」
でも私は不思議とそれをよく理解していた。死が二人を分かつまで、なんて今まさに愛し合うために死のうとしている私達には戯れ言に過ぎない。
そしてゆるやかな終焉へ全てが全て、狂ってる