「「なあ、ナマエ」」
「なにかしら?フレッド、ジョージ」
「「面白いことしないか」」


キスで目覚めるらしい?
それって凄く素敵!


いつものように昼食をとりに広間へ行ったら朝にはいたはずの彼女の姿が見えなかった。おかしいな、と首を傾げてウッドの隣に座った。

「パーシー、仕事帰りか」
「ああ……主に僕を悩ませるのは弟達だけどね。ところでオリバー、ナマエを見かけなかったかい?」
「あー、ナマエなら確か広間に入る前に双子と話してたな」
「あいつらと?」

嫌な予感がした。彼女がフレッドとジョージと一緒に?奴らが動くときは必ず悪戯がついてくる。いや、悪戯ですまされないときだってあるのにもしもナマエになにかあったら……

「おいパーシー!どこいくんだ!」

僕はバッと立ち上がって談話室に走った。

「――それで?これは一体どういう状況かな弟達よ」

暖炉の前のソファに横たわる彼女の髪を撫でる。その向かいに座る双子の弟達がニヤニヤ笑っていた。実はな、とジョージが今にもふき出しそうに話し出した。

「「なあ、ナマエ」」
「なにかしら?フレッド、ジョージ」
「「面白いことしないか」」

俺達は広間に行くところのナマエに話しかけた。彼女はいつもの朗らかな笑みで俺達の名前を呼んだ。全くどこかの石頭には勿体無い彼女だな。そこで俺達は提案したんだ。

「パーシーの愛、試してみないか?」

ジョージがそう言うとナマエは目を輝かせていた。まあ彼女は面白いことが好きだからな。フレッドがポケットに入れていたチョコレートを取り出した。もちろんただのチョコレートじゃない。効果を彼女に教えたら凄く楽しそうに笑ってそれを受け取った。俺達は談話室に向かい、彼女はソファに座ってそれを食べた。

「そして今に至る」

正直我慢出来なかった。無理に冷静を装ったが本当は弟達を五発ずつ殴りたい気持ちでいっぱいで。

「それで、そのチョコレートの効果は?」
待ってましたとばかりにフレッドが立ち上がる。

「ああパーシーよ、よく聞いてくれました!そのチョコレートの効果はな」

双子が目線を交わした。

「「キスをしない限り目覚めない」」「……キキキキキッス!?」
「俺らが見たところパーシーさんはキスは愚か手を繋ぐことだってままならない」
「それを見かねてヘルプを出してあげたのさ」

感謝されるべきだよな、と声を揃えた。冗談じゃない、余計なお世話だ!ずり落ちそうになる眼鏡を押し上げ再び彼女を見る。―キスをするまで目覚めないだって?何てことをしてくれたんだ。

「どうしたパーシー、するのかしないのか?」
「「変わりに俺達が」」
「わかった!するから出ていけ!!」

文句を言いながらも腹の立つ笑みを浮かべる双子を肖像画の外に追い出した。幸いなことに生徒は今みんな昼食で広間にいる。するなら今しかない、と意気込むもなかなかできなかった。そんな僕の気も知らず、彼女はぐっすりと眠っている。ナマエはどうして双子の提案を了承したのだろう。確かに彼女は面白いことが好きで、よく双子の悪戯に目を輝かせているがこんなことをすれば僕が困ることを知っていたはずだ。小さな溜め息をついて諦めたように彼女の顔に唇を寄せたがどうしてもためらってしまう。早く、と急かすように手がピクリと動いた。彼女の手を握り、ついに僕はキスをした。触れるだけのキスなのに、ナマエの柔らかい唇にクラクラした。

「パーシー」

彼女が静かに起き上がって僕に抱きついた。

「ナマエ……なんでこんなこと」

彼女の肩に顔を埋めて真っ赤になった顔を隠す。だってあなたったら私のこと大事にし過ぎるんですもの、と彼女は笑って言った。

「大好きよ、パーシー」

僕は彼女に二度目のキスをした。チョコレートの味がする、甘い甘いキスだった。


キスで目覚めるらしい?
(今回は俺達、キューピットだな)
(悔しいけど幸せそうじゃないか、)


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