先輩、という僕の呟きは届かなかった。談話室のソファで眠る彼女に毛布をかけてあげると、ひどく悲しい気持ちになった。彼女の瞼が赤く腫れている。無理もない、連日泣き通しだったのだから。恋の相手は僕の兄さんのシリウス・ブラックだった。彼は彼女のことをスリザリン生が俺に近づくなの一言で追い払い、最近できたというレイブンクローの女の肩をこれ見よがしに抱いた。偶然それを見かけた僕は複雑な気持ちになった。兄さんは自由に生きている人だったから兄さんらしいと言えば兄さんらしかったけどそれでも彼女は傷ついたのだ。僕は彼女が自室に籠もり兄さんを思って泣いていたのを知っている。兄さんは知らない。なぜ、と思う度に虚しい怒りがこみ上げてきたが僕にはどうしようもできなかった。僕が兄さんで兄さんが僕だったら良かったのに。何度心からそう思っただろう。僕は彼女が好きだったんだ。スリザリン生なのに明るくて、どの寮でも分け隔てなく接し人気のある彼女を。さらさらと流れるような髪を優しく撫でると彼女が寝返りをうった。唇が微かに動いたので耳を近づけてみる。(レギュラス)それは聞いちゃいけない言葉だったんだ。どうしようもなくて拳を強く握った。(おはよう!レギュラス、毛布ありがとう)(おはようございます……なぜ毛布が僕からだと?)(だってレギュラスの匂いがしたもの!)(……脱臭してきます)


崩れた日常



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