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「なぁ、さっきの見たか?」
「見た見た、転校生だろ?」
「スタイルやべーっていうより胸デカすぎじゃね?」
「太り過ぎず痩せ過ぎずな感じがたまらねーよな!」


なんて言葉が聞こえないはずがなく、ハァとため息一つ。またこの学校でもこの体型で噂されるのか・・・好きでこの身体になったわけじゃないよ。




某日。
私は両親の海外赴任をきっかけに一人暮らしを初めた。昔から仕事中心の両親に日本を離れるまで振り回されたくはなかったし、一緒に行ったところで毎日顔を合わせる事は無いだろうと思ったからだ。「なまえはしっかりしてるから一人でも大丈夫ね」と私の案はすんなり通ったが、別に一人が平気でもしっかりしている訳でも無い。ただ、そういう状況で生活してきたからだ。そしてその状況を作り出したのは両親だ。

別に嫌いとかではない。
変に執着されるよりも、信頼され一人で生活出来ているのだから。好きに生きられているので合っていると言えば合っている。
でも、ふと寂しいと思う時だってある。


それにプラスして私の見た目。
冒頭でも言われた通り、他の女の子達より胸は大きい方だ。これは謙遜して「そんなことないよ〜」なんて言える大きさではない。生活に支障が出る程なのだから邪魔で仕方ない。それに加え身長が低い。チビで少しむちっとして胸がデカいなんて、噂の標的になるに決まっている。外見で色々言われ始めたのは中学に上がってからなのでかれこれ5年。まぁ、もう慣れた。




「おい、教室行くぞー」
「あ、はい!」

気だるそうに前を歩くのが私の担任になる銀八先生。初めて会った時「お前夜遅く帰るのは気をつけろよー」と言われた。なんのことかさっぱりだったが、名簿で私が一人暮らしなのとこの外見から察したのだろう。流石先生、気を遣った言い方だ。
と思ったのは一瞬で。
「で、何を食ったらそんなに育つんだ?牛乳?」なんて教師らしからぬ事を言うもんだから一気にこの先生の株は下落した。




ガララー・・・


「おめーら席に着けー」
間延びした言い方で生徒に指示を仰ぎながら教壇に向かう先生の後ろをパタパタとついて行く。見覚えの無い私に先程までガヤガヤしていた教室は一瞬で静かになった。

「先生ー、その子誰ですかー?」
早速私の話題になると、先生はごほんと咳払いをし、黒板に少し汚い字で私の名前を書き始めた。

「えー、今日からこのクラスに転入してきたみょうじなまえだ。仲良くしてやってくれー」
と、先生が紹介した瞬間、ドッと教室中から質問が飛んできた。何処から来たの?彼氏居るの?部活何入るの?休みの日は何してるの?などなど。でも、そんな質問の中に私の外見に対しての質問はひとつも無かった。


「え、と・・・その、」
「おめぇーら、そんな一気に質問したらみょうじだって答えられないだろうが。一人ずつにしろ、一人ずつに。」



と、この日は一日中クラスメートからの質問で終わった。
素で嬉しかったし、楽しかった。
初めて会った人達なのに、ずっと前から知り合いでずっと前から仲良しの友達のようで。

誰も外見では無く、私の中身を知ろうとしてくれたから。
ああ、私、ここにきて良かったな。




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