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君がため

君がため @optimism_chaos

いっそのこと捨ててしまえばいいと思っていた。役に立たないならば。左様、ならば。
家にいるのも億劫で、マトモに練習に参加するふりをして玄関を出る。こんなに絶望的なのに、夏の朝は生命力に輝いていて笑えた。それも、幾日か経てばどうでもよ

くなる。この歳になると、夏休みの公園とはいえ同年代は見かけない。普段通りに駅まで行って、適当に本来の目的地とは逆の方向の電車で二区間ほど。それからは行き当たりばったりで歩いて行く。260円ギリギリまでの逃避行は近いようでいて、生活範囲ではないという妙な安心感があった。
その日は、

毎月の小遣いが出る前日で、もういっそ今月分の小遣いを使い切ってやろうと俺は財布の中身を数えた。もう、その頃には地元から9つ離れた駅の周りは目新しくはなくなっていた。
所持金ギリギリかつ、治安の比較的良い場所の切符を買って、俺はいつもより長い間列車に揺られた。

駅を降りて、帰りの切符を買うと、残金はジュースが2本買える程度になってしまった。何かあった時に困りそうだなと思って、その時はのたれ死ねばいいと考え直した。そんなことを考える割に、家へ帰るための切符はしっかり用意しているんだからバカみたいだ。本当に。

しばらく歩き回っていると、大きな公園に出くわした。まだ太陽は登りきっていなくて、午前中のまだ過ごしやすそうな木陰のベンチにはいろんな種類の人間が疲れた顔で座っている。平日の朝っぱらから公園で居眠りしている草臥れたサラリーマンに仲間意識を感じつつ、俺は人気のない場所を探して敷地の中

を歩き回った。
公園より小高いところに建っている洒落たマンションへ直接続くスロープの向こうに、小さなバスケットコートがあった。建物の影で、どこか高架下のような雰囲気を漂わせているそこに、俺は腰を落ち着けた。結局ここに戻ってきてしまうのか。

そう思ったらまた笑えて、なんだかおかしかった。こんなに絶望的なのに、度々笑って、先のことを考えて行動している。ほとほと、こういうのに自分はむいていないのだな、と思った。
死にたいと思っても、死ねるようなタイプではなかった。
でも、もうバスケをすることはできない。あそこに戻ることは





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