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夏の青
〔夏の青〕@AinohaCherry
白い砂浜へ続くアスファルトを二人で歩いた。地表には丁度いい風が吹き、その上ではかなりのスピードで雲が流れている。吹き流された雲が太陽を覆って、足元の黒が濃さを増した。
#リプきたタイトルで書く予定のない小説の一節を書く
「風が涼し〜!」
塩の空気が混じった風が、黄瀬の髪を揺らした。
「カンカン照りじゃなくて良かったな」
シュノーケルがついたゴーグルを引っさげた海パン姿の俺たちの隣を、年季が入った送迎バスがトロトロと走り去って行った。シーズン真っ最中なのに、人気のない砂浜が姿を現す。
風が雲を吹き飛ばして、水際がピシャピシャと太陽をはじいた。そこへ海パンの上に羽織った白いシャツをはためかせながら黄瀬が走り寄っていく。
「ゆきさん!海!うみぃ〜っ!」
「わぁったって!」
砂浜を走ると、白砂が足の裏でぎゅっと軋んだ。太陽を一心に反射する砂は痛いぐらい熱くて、
全力で走って勢いをつけて海水に飛び込んだ。
「うわっ!ちょ!かかってる!」
「かかりに来たんだろうが、よっ!」
文句を言う黄瀬の首に腕を回して引き倒すと、ラリアットをいい損ねた妙な断末魔を上げて海水に沈んだ。すぐに顔を振って浮かび上がる。
大きく息をすい込んだ男の髪が、濡れてぺったりと額に張り付いているのを見て、なんだか堪らなくなって大の字に浮かぶ上に飛び乗った。黄瀬の口から滑り出た気泡が頬を擽って、それが勿体なくて口付ける。
「ね、もう一回」
浮かび上がった所をもう一度引きずり込まれて、青に隠れてキスをした。