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何も言ってくれない
吐き出してと男は言った。口から表に出せる訳がなく、けれど吐き出せと言われた言葉に嫌だとも応えたくない。
無理だと言おうとした声は狭まった声帯に塞き止められた。
喉元が熱くて、喘ぐこともできない。
「あんたって、狡い人っすよね」
その言葉を否定できる筈もなく、俺は音と水滴を体の奥へと押し込んだ。
なにも言えないから、ごめんとも言えない。
「そんな顔、しないでよ」
男は顔を俯けて、深く息をついた。
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