晴矢は最近彼女と別れた。

俺があの女の浮気を告げ口したわけじゃない。
晴矢もあの現場を何度も見ていたらしい。

晴矢はその事を言わずに別れをきり出したら、逆ギレされて平手打ち。
ほんとあの女ムカつく。

あんな女と別れられてよかったじゃん、もっといい子いっぱいいるよ!

そう言ったって晴矢は表情ひとつ変えない。


「俺、ほんとあいつのこと好きだったんだよな」

「……うん」


別れたあとぽつりと泣きそうになりながら放った一言に、俺の方が泣きそうになった。



一週間たっても晴矢は落ち込んだまま。
晴矢がそんな落ち込んでるとこ見たことなかった。

今も誰も居ない教室でボケッと外を眺めてる。


「はーるや。まだ引きずってんのかよ」

「……うるせー、ほっとけ」

「ほっとけるわけないだろ」

「……」

「泣きたいなら泣けよ」

「はぁ?誰も泣きたいわけじゃねーよ!」

「嘘だ。だって晴矢ずっと我慢してただろ」

「我慢、なんか、して…っ、ぅ」
晴矢はぽろぽろ泣いて俺の腕を掴んできた。

(懐かしいな、この癖)

泣くとき俺の腕を掴んで泣く。こうゆうとこは昔から変わらないのに。


「俺、初めてあんなに好きになった」

「うん」

「ずっと俺の事も好きでいてくれるんだと思ってた」

「うん」


晴矢から出る言葉は昔とは全然違う。
それでも俺は昔みたいに頭を撫でながら


「大丈夫。俺はずっとお前のこと好きでいるよ」

「ははっ、なんだそれ」


だって俺は16年晴矢のこと好きだったから


「お前と俺の幼なじみの年数舐めんな」

「……サンキュー」


あの時、晴矢があの女と仲良くする前に俺の気持ち伝えてたら







きみを守るのも傷つけるのも他の誰かで








きっとあの女みたいに晴矢と笑いあったりキスしたり出来なかった。


だって俺はただの『幼なじみ』だから。