「守さぁ好きな奴いねーの?」

「……なんで?」

「だってお前とずっと一緒にいるけど、好きな奴とか出来たとこ見たことねーなぁって」


馬鹿だな晴矢は。
俺の好きな奴なんてとっくの前からいて、ずっと一緒にいるっつーの。



「好きな奴なんかいないよ」




好きだったよ誰より




晴矢に彼女が出来て半年。
今もすごい仲良くて上手くいってるみたいだ。

だから晴矢はいつもニコニコ。聞きたくもない惚気を俺に話して聞かせる。
あの子が本当に好き、
昨日はやっと手を繋いだ、
あそこの公園でキスした、


初めてセックスした


幸せそうに話すんだ。

(ある意味拷問だよな)

二人でよく通った帰り道を一人きりで歩くときによく思う。

諦められればいいのに、と。

だけど諦めるには16年の月日は長すぎた
多分俺は晴矢以上に好きな奴なんかあとにもさきにも出来ない。



「……あれ?」


暗い思考に持っていかれそうになったとき、向こうの角から晴矢の彼女の姿が見えた。
あぁきっとあの後ろから晴矢も出てくるんだろうな……最悪だ。


でも、そんな俺の予想に反して続いて出てきたのは晴矢じゃなかった。
うちの学校の奴じゃない。

しかも親しげに、まるで晴矢といるときみたいに腕を組んで歩いてる。


「お前彼氏いんのに俺なんかと一緒いていいの?」

ニヤニヤ笑いながら腰に手を回す男を振り払うわけでもなく

「いーのいーの!晴矢は遊びだから」


そう彼女は言って笑うのだ。



(俺の大切な人はあんな最低な奴に奪われたのか)





俺は初めて人を本気で殺したいと思った。