暗然たる港町(5/5)



二手に分かれ情報収集し、合流して情報をまとめると街を出て南の高台の森で見かけたとのことなのでそこに向かうことになった。


街を出ようとすると、フレンたちと出会った。

「相変わらず、じっとしてるのは苦手なようだな」
「人をガキみたいに言うな」

軽い調子で返すユーリとは裏腹にフレンは固い表情をしている。

「ユーリ、無茶はもう……」
「オレは生まれてこのかた、無茶なんてしたことないぜ。今も魔核ドロボウ追ってるだけだ」
「ユーリ……」
「おまえこそ、無理はほどほどにな」

ユーリが歩きだすと他の面々もついて歩き始めた。が、エステルの姿が見えないので後ろを向くと何やらフレンと話している様子だった。
ユーリたちが向かっている方を気にしながら話し終るのを待とうとすると、同じく気づいたらしいカロルがこちらに向かって走ってきた。

「なんだ、アスカが先にエステルのこと待ってたんだ」
『カロルより気が効くもんでね』
「もう…。確かにアスカは周りをよく見てるけどさ」
『そりゃどーも。で、ユーリ大分先行ってるけどいいの?』

そう言うとカロルはハッとした表情をしてエステルに声をかけた。

「ね、エステル、もう行こう。ユーリに置いていかれるよ」

「ええ、わたしたちもこれで」

フレンに軽くお辞儀をして、一言二言話した後エステルはこちらに小走りできた。

「ごめんなさい。お待たせしました」
『これくらいで謝るなって。じゃ、行こうか』

立ち止まってくれていたユーリたちに合流すべく歩き始めた。




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『見当たらないなあ…』

リブガロを探し始めて数十分が経っただろうか。未だリブガロは姿を現していない。

「ちょっとがきんちょ。リブガロの情報嘘じゃないわよね」

リタはうんざりした顔をしながらカロルを訝しはじめた。
疑いを晴らすためにカロルは否定する。

「街の人も言ってたし嘘じゃないはずだよ!」
「ま、落ち着けって。もうちょい探してみようぜ」
『それでもいなかったら一旦引き上げよう』

「あ、カロル。あの魔物がそうです?」

エステルの目線の先を見ると、ツノが特徴的な黄色く体躯の大きな四本足の魔物がいた。

「これがリブガロだよ!」

カロルの声でこちらに気づいたのか、リブガロは戦闘態勢に入り、あたしたちも態勢を整えた。




しばらく戦闘を続けているうちに体力が尽きたのか、リブガロはどさりと倒れ込んだ。


「さっさと連れて帰ろうよ」
「傷だらけ…………少しかわいそうですね」

見つけた当初の遠目ではわからなかったが、リブガロは既に傷でぼろぼろになっていた。
思ったことをユーリが代弁する。

「死にもの狂いの街の連中に何度も襲われたんだろうな」
「街の人が悪いわけじゃ……」
「わかってるって」

ユーリはリブガロに歩み寄ると、パキリとツノを取った。

「ユーリ……?」
「高価なのはツノだろ?金の亡者どもにゃこれで十分だ」
『こんなでかいの連れてくのも面倒だしな』
「あんたらが魔物に情けなんてかなり意外なんだけど」

「のんきなこと言ってたら、ほら、起きるよ!」

立ち上がったリブガロはじっとこちらを見た後、森の奥へと駆けて行った。

「あ、あれ?なんで?」
「わたしたちの意図を、理解してくれたんですよ」
「魔物が?まさか?」
「ツノが手に入ったんだからなんだっていいさ」
『さ、ノール港に戻ろう』

ツノを献上品として持っていくべく、一向はノール港へと足を進めた。








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