暗然たる港町(3/5)



受付の人にふたりがいる部屋を聞き、その部屋の前まで移動してユーリがドアを開けた。
フレンとエステルは机を挟みソファに腰かけていた。

「用事は済んだのか?」

ユーリがそう聞くとエステルがうなずいて返した。

「そっちのヒミツのお話しも?」
「ここまでの事情は聞いた。賞金首になった理由もね」

フレンは立ち上がりユーリと向かい合った。

「まずは礼を言っておく。彼女を守ってくれてありがとう」
「あ、わたしからもありがとうございました」

エステルも立ち上がりその場ですっと綺麗なお辞儀をした。

「なに、魔核ドロボウ探すついでだよ」

部屋の奥の方へ移動しながらフレンは言葉を続ける。

「問題はそっちの方だな」
「ん?」
「どんな事情があれ、公務の妨害、脱獄、不法侵入を帝国の法は認めていない」

フレンの眉間にわずかに皺が寄り、目つきも鋭くなった。
想像以上に真面目、と言うより頭が固い。何故対照的なユーリと友人なのか思った。
エステルが眉を下げ申し訳なさそうな表情を浮かべ謝った。

「ご、ごめんなさい。全部話してしまいました」
「しかたねえなあやったことは本当だし」
「では、それ相応の処罰を受けてもらうが、いいね?」

「フレン!?」

フレンの発言にエステルが驚き彼女にしては珍しく大きな声を上げた。
同行していた自分やカロル、リタはどうなるのかと疑問に思ったが割り込める雰囲気ではないと感じたので黙っておいた。

「別に構わねえけど、ちょっと待ってくんない?」
「下町の魔核を取り戻すのが先決と言いたいのだろ?」

フレンがユーリの言葉の意図を汲み取ったところで、部屋の扉が開きハルルで出会った女性騎士と背の低い魔導士のような少年が入ってきた。
少年はリタを見るなりあれこれと文句を言い始めた。

「フレン様情報が……なぜ、リタがいるんですか!!あなた、帝国の協力要請を断ったそうじゃなですか」

少年はリタを指さしなおも文句を続ける。

「帝国直属の魔導士が、義務づけられている仕事を放棄していいんですか?」

「誰?」
「……だれだっけ?」

ユーリがリタに質問を投げかけるも、リタは覚えていない。
魔導器以外に興味のないリタが覚えてるわけないよな、と思い少年を憐れんだ。

「……ふん、いいですけどね。僕もあなたになんて全然まったく興味ありませんし」

少年はこちらに背を向けて嫌味ったらしく言葉を吐き捨てた。
全然まったくとか言いながらライバル視しているんだろうとか色々想像を巡らせた。
気を取り直し、フレンがこのふたりの紹介をする。

「紹介する。僕……私の部下のソディアだ」

ソディアはこちらに視線を移し、軽く一礼した。
目線が合うとはっと気づいたような表情をしたので、礼を返した。

「こっちはアスピオの研究所で同行を頼んだウィチル」


そしてフレンがユーリに視線を向け紹介しようとしたその時。


「彼は私の……」


「こいつ……!賞金首のっ!!」


ユーリの顔を見るや否や、ソディアは声を荒げ剣を引き抜きユーリに向けた。
冷静な人物という印象を持っていたので、いきなりのことに驚く。

「ソディア!待て……!彼は私の友人だ」
「なっ!賞金首ですよ!」
「事情は今、確認した。確かに軽い罪は犯したが、手配書を出されたのは濡れ衣だ」

フレンが制止し説明するも納得がいかないという顔をするソディアだが、フレンは説明を続ける。

「後日、帝都に連れ帰り私が申し開きをする。その上で、受けるべき罰は受けてもらう」

「し……失礼しました。ウィチル、報告を」

ようやく落ち着いたらしいソディアは剣を戻し、ウィチルに報告を促した。


「もう用事は終わったんでしょ」

さっさとこの場を離れたいと言いたげなリタだったが……。

「この連続した雨や暴風の原因は、やはり魔導器のせいだと思います」

"魔導器"というワードを耳にした途端反応してウィチルの方を見た。

「季節柄、荒れやすい時期ですが船を出すたびに悪化するのは説明がつきません」
「ラゴウ執政官の屋敷内に、それらしき魔導器が運び込まれたとの証言もあります」

ウィチルに続いてソディアも報告する。それを聞いてリタが頭を働かせる。
魔導器が天候を……?気にかかり話に耳を傾ける。

「天候を制御できるような魔導器の話なんて聞いたことないわ。そんなもの発掘もされてないし……いえ、下町の水道魔導器に遺跡の盗掘……まさか……」
「執政官様が魔導器使って天候を自由にしてるってわけか」
「……ええ、あくまで可能性ですが」

ユーリの推論にソディアは肯定的な回答を返した。

『天候を操る魔導器……』

「その悪天候を理由に港を封鎖し出航する船があれば、法令違反で攻撃を受けたとか」
「それじゃ、トリム港に渡れねえな……」

このままでは魔核ドロボウを追って行けない。手詰まりになってしまったためユーリは苦い顔をした。

「執政官の悪い噂がそれだけではない」

フレンが表情を硬くし執政官について話を続ける。

「リブガロという魔物を野に放って税金を払えない住人たちと戦わせて遊んでいるんだ。リブガロを捕まえてくれば税金を免除すると言ってね」
「そんな、ひどい……」
『……悪趣味なことを』
「入口で会った夫婦のケガってそういうからくりなんだ。やりたい放題ね」

夫婦のケガの理由を理解したリタも険しい顔をした。
あ、と思い出したようにカロルがぽつりと言葉を漏らす。

「そういえば、子どもが……」
「子どもがどうかしたのかい?」
「なんでもねえよ。色々ありすぎて疲れたし、オレらこのまま宿屋で休ませてもらうわ」

フレンの問いかけをユーリがはぐらかし、部屋を出て行こうとしたので続いて行った。









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