丘を越えて(3/5)



飛び出してきた魔物を倒し、時には雑談をしつつも獣道を進んでいった。
しばらくしたところで、花弁の先が黄色くグラデーションがかった赤い花が咲いているのを見つけた。
あれはビリバリハという花だ。

「山ん中じゃ、こんな花咲くんだ」

「リタ!触っちゃだめ!」

リタとカロルが花に近づきリタが花に触ろうとすると、エステルがそれを制止する声を上げた。

「ビリバリハの花粉を吸いこむと目眩と激しい脱力感に襲われる、です」
「ふーん……」

エステルから花の解説を聞いたリタはカロルの後ろに回り込んだ。
何をするのかと黙ってみていると、カロルを花に向かって突き飛ばした。

「ちょ、何を……」
『っ、おまっ』

カロルとぶつかったことにより、ビリバリハはカロルに向かって花粉をまき散らした。
逃げる余裕もなく、思い切り花粉を吸いこでしまっただろう。

「あ、ゴメン!」

リタは謝罪するも悪気は感じられず、むしろ笑顔だ。
心配したエステルは動かなくなったカロルに駆け寄り治癒術をかけた。
が、カロルが戻る気配はない。

「治癒術に興味あんのか?」
「別に……」

遠くから見ていたユーリが、その様子を見ていたリタに声をかけるとリタはふいと顔をそらした。

「……だめですね。治癒術では治りません。自然に回復するのを待つしかなさそうです」
「これ、いつ治るんだ?」
『とりあえず、意識が戻るまで寝かせておこう』
「カロル、がんばってください」





しばらくして、意識を失っていたカロルが目を覚まし、リタに対し小言を漏らした。

「うう、ひどいよ、リタ〜」
「だから、ごめんって言ったでしょ」
『これからはやりすぎんなよ』
「平気なら、行くぞ」
「ビリバリハには今後気をつけましょうね」


順調に道を進んで行き、開けた場所までくると突然獣の咆哮が響き渡った。

『この声は……』
「ん…なに?」

一同は足を止めカロルはおびえたように周囲を見回している。

『アイツだ』

あたしが崖の上に視線を送ると皆そちらを見上げた。
その姿を確認すると、カロルは驚いて声をあげた。

「うわああっ!」
『ハルルの街を襲ったヤツだ』

今までこの周辺で見たガットゥーゾピコが数倍大きくなり、禍々しさが増したような姿をしている。
ハルルでは騎士が集団で相手して苦戦していた記憶がある。

「へえ、こいつがね。生き残りってわけか」
「ほっといたらまたハルルの街を荒らしに行くわね、たぶん」
「でも、今なら結界があります」
「結界の外でも近所にこんなのいたら、安心して眠れねえからな」

再び魔物は咆哮すると崖から飛び降りてきて、小さな魔物二匹を引き連れこちらに向かってきた。
皆武器を構え、魔物との戦闘が始まった。












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