天才魔導士(3/5)



「なんかモルディオみたいのがいっぱいいるな……」


扉を開けると、天井の高さまである本棚がびっしりと立ち並んでおり、そこには大量の本が収納されていた。
流石、学術都市といったところか。
そこかしこにマントを着た人々がいて、本を読んでいる。
エステルが近くにいた人に話しかけた。

「あの、少しお時間よろしいです?」
「ん、なんだよ?」

すごくよそよそしい態度だ。
邪魔をするな、とでも言いたいような目をしている。

「フレン・シーフォという騎士が訪ねて来ませんでしたか?」
「フレン?ああ、あれか、遺跡荒らしを捕まえるとか言ってた……」
「今どこに?」
「さあ、研究に忙しくてそれどころじゃないからね」

そう言うと、また本に目を通し始めた。
冷めた奴だ、と口にしそうになるが心の中に留めておいた。

「そ、そうですか。ごめんなさい」
「じゃあ、失礼するよ」

「ちょ、待った。もうひとつ教えてくれ。ここにモルディオっていう天才魔導士がいるよな?」

ユーリがモルディオについて問うと、目を見開き吃驚した。
入り口にいた騎士のように。

「な!あの変人に客!?」

「さすが有名人、知ってんだ」
『変人で有名なのかよ……』
「……あ、いや、何も知らない。俺はあんなのとは関係ない……」

「まだ話は全然終わってないって」

ユーリはその場を去ろうとした研究者の腕を掴み引き留めた。

「もう!なんだよ!」
「どこにいんの?」
「奥の小屋にひとりで住んでるから勝手に行けばいいだろ!」
「サンキュ」

うんざりした顔をして、足早に立ち去っていった。


「大丈夫なの?」

カロルが不安そうな表情でユーリに問う。

「ん?」
「名前出しただけで、みんな嫌がるなんておかしいよ」
「気になりますね」
『相当な奴なんだろうな』
「そりゃ、魔導器ドロボウだしな。嫌われてんのも当然だろ」


一行はモルディオの小屋へと向かった。
小屋は、広場から離れたところにぽつんと建っていた。

ドアに張り紙が貼ってあった。


「絶対入るな、モルディオ」

「ここか……」

ユーリがドアノブを捻ったが、ここも鍵がかかっていた。
次にノックをする。

「普通はノックが先ですよ……」

エステルが若干呆れた顔して言った。

『細かいこと気にすんなよ、エステル』
「いないみたいだね。どうする?」
「悪党の巣へ乗り込むのに遠慮なんていらないって」
『そうそう』

ユーリは今にも扉を蹴倒してでも、乗り込もうとした雰囲気だ。

「だ、だめです。これ以上罪を重ねないでください」

「なら、ボクの出番だね」
「え……?出番って……」

カロルがドアに近づいて早速取りかかった。

『よし、行けカロル』
「それもだめですって!」

するとすぐにガチャ、と音をたてて鍵が開いた。

「ま、ちょろいもんだね」

ユーリは早速ドアノブに手をかけた。
ユーリの後ろに続いてモルディオの家に入る。

「待って!ボクも行くよ〜」
「あ、待ってください!もう、どうしてこう……」









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