4

私と仁美さんと佳香で楽しく夕飯を摂っていたとき。

インターホンの音が連続で聞こえる。

持っていた箸を置くと、急いで玄関へと急ぐ。

扉を開けると同時に、体当たりするかのように脚に抱きつかれた。

 

 

「美静ちゃん」

この子は、佳奈と香里ちゃんの娘で美静ちゃん。

そして私たちの娘である佳香の片思い相手である。

 

「どうしたの?…佳香ちゃん?」

「なにかあったの?」

慌てて私に走り寄ってきたのは仁美さんと佳香。

とりあえず、美静ちゃんを抱き上げて、リビングへと連れていくことにした。

 

ぐしゃぐしゃな顔と、涙により潤んだ瞳。

真っ赤に染まった頬。

ティッシュで優しく拭ってあげてから、りんごジュースを飲ませて落ち着かせる。

 

「どうしたの?私たちにお話ししてみて?」

頭を撫でながら、笑いかけると小さく頷いて話し始めた。

 

「あの、ね。かなちゃんとかおちゃんが、ね。うっ…、えっとね、かなえちゃんがね、好きでね。」

嗚咽が混じりながら話すため、単語しか聞き取れない。

「かおちゃんが泣いてね、かなちゃんがどこかにいっちゃったの」

 

なんとなく理解はできるけど…

仁美さんに視線を送ると、困ったように笑っていた。

状況は私と一緒らしい。

すると、我が娘が前に出て美静ちゃんを抱きしめた。

 

 

「だいじょうぶだよ。佳香とひとみママとしずかママがついてるから」

頭を撫でながら微笑む我が子佳香。

それにより美静ちゃんの表情もすこし明るくなる。

 

「ひとみママ、しずかママ」

「ん?」

「なに?」

「かなちゃんとかおりちゃんが喧嘩してね。その理由が、かなちゃんが”かなえちゃん、かなえちゃん”って言ってるからなんだって。それでかおりちゃんが泣いて、かなちゃんがどこかに行っちゃったんだって」

うん…

私も愛娘すごいよ。よく全部意味がわかったね。

これも美静ちゃんへの愛ゆえかな?

 

「美静ちゃん、だいじょうぶだよ?」

「佳奈も香里もすぐ仲直りするよ?」

そう、ちょっとした嫉妬が生んだ事件。

たぶん佳奈は妬いてもらえたことにすこし嬉しそうにしているだろうし、

香里ちゃんは、言い過ぎたかなと自分を責めているだろうし。

それにあの2人は、結局お互いのことが大好きなのだ。

 

「あ!そうだ。わたしたちがいいことしてあげる」

仁美さんが思いついたようにつぶやくと、にっこりと笑う。

そんな仁美さんにきょとんと首をかしげる美静ちゃん。

我が娘も可愛いけど、美静ちゃんも可愛いなー

早く私たちの娘にならないかな?

 

 

携帯電話を手に取った仁美さんは、誰かに電話するようだ。

1コール後に、はい、と佳奈の声が聞こえた。

「もしもし。佳奈?」

『なに?』

「あのさ、私たち、美静ちゃん誘拐中だから」

そこで、仁美さんが美静ちゃんに携帯を向けた。

”たすけてーかなちゃん”って言ってね

そう小さく囁くと、大きく頷いて美静ちゃんは口を開いた。

「かなちゃん、、たすけて」

泣きまねが混じるそれは、もうクオリティーが高すぎて聞きわけが難しい。

それも親ばかな佳奈のことだ。疑う余裕なんてないだろう。

「ということだから、早くこないと私たちがもらっちゃうからね」

 

ピッと電源を切り、仁美さんは満足そうに笑った。

「一度、こういうのしてみたかったんだよね」

「仁美さん…」

もうダーリンすごい。

やってみたい、だけで実行するなんて!

 

「次は香里だよ」

 

「もしもしー香里??」

『なば…?』

鼻声の香里ちゃんの声がわずかに聞こえた。

「あのさ、今、私たちのところで美静ちゃん軟禁してるから」

「かおちゃ…たすけて」

泣き声を聞いた香里ちゃんは慌てて立ち上がったのか、どたばたと音が聞こえる。

『なば、どういうこと?』

「そういうことだからー。じゃあね」

 

先ほどと同様に電源を切ると、仁美さんはやり遂げたように微笑んだ。

「静ー。来ると思う?」

「絶対くるよー。だって…」

 

「「親バカだもんね…」」

見事に言葉が重なりくすくすと2人で笑った。

 

可愛い我が娘佳香と美静ちゃんはといえば、近くにあったおもちゃで楽しそうに遊んでいる。

 

 

あの脅迫(?)電話から、3分くらいだろうか。

突然インターホンが鳴り、扉を開けて不法侵入してきた佳奈と香里ちゃん。

2人とも、急いできたのか息を切らしている。

 

「なばと静に・・・・美静は渡せない…から」

「可愛い美静は私たちの娘、ですから」

「かなちゃーん!かおちゃーん!」

きゃっきゃと笑いながら佳奈と香里ちゃんに抱きつく美静ちゃん。

うん、いい家族じゃない!

本当に喧嘩していたのかってくらい、佳奈と香里ちゃんは笑い合っている。

 

そんな素敵な場面をみていると、佳香が私に抱きついてきた。

「どうしたの?」

「佳香もしずかママにぎゅってする」

もう、我が娘は本当に可愛い!

大事なことなのでもう1度言います。

佳香は可愛い!

 

 

こんなことが3カ月に1回ある我が家と佳奈・香里ちゃん夫婦。

 

結論を言えば「可愛い娘が仲直りのきっかけになる」ということで。

 

とりあえず、羨ましそうに見ている仁美さんはあえてスルーして。

私は、佳香をお膝にのせて、佳奈たちの様子を温かく見守るのでした!

 

 

【続く、かも】

 



[ 24/40 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


トップ


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -