仮面がおちて

彼女の泣いた顔を初めて見た。いや、初めてというのは哀しみにくれた表情を、という意味で。
見ないでとか細い声が耳に届いて私の胸を押して距離を取ろうとする。
「もう顔もみたくないわ」
いつもは笑顔か困り顔だけの彼女が私を拒絶した。その事実が数秒たって私の心を射抜く。まるで鋭い刃物を突きつけられたような傷み。

「嫌いになった?」
「そんなわけないじゃない」
泣きながら彼女の唇から紡がれた言葉。
その頬に触れたいのに、これ以上私が貴女に触れたなら壊れてしまうのではないかと思う。


「どんなに想っても。どんなに好きでもきっと貴女と添い遂げられない。私が貴女の隣にいる資格なんて最初から無かった。知っていたわ、けど、それでも私は」
これ以上彼女から悲劇の言葉を紡がせるにはあまりに酷で、私は塞ぐようにその唇を奪った。


「ひどい人ね。本当にひどい人だわ」
「ごめんなさい。けど、私は貴女が好きだから。結局、私は貴女を手離したくないのよ」


ねぇ。
どうしたらこの悲劇を止められるのかしら?




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