だいすき

舞台の幕が上がる数秒前に背筋を伸ばして前を見据える彼女は純粋にきれいだと思えた。贔屓目なしに、きれいな人だったけれど歌うその瞬間までの表情が真剣さに見惚れた。
仕事を楽しもうとする姿勢に共感を持てたことや取り組む姿全てが好きだった。
この感情は憧れなのかさえ定かではないが、私は案外気に入っていたりする。


声をかけるとゆったりとこちらへ体を向けて微笑む。なぁに?との返答にお疲れ様と言葉をかければ、ありがとうといつもの会話が始まる。


「今日は一緒に帰りましょうね」
「いいわよ」
「昨日は時間が合わなくて帰れなかったから寂しかったの」
整った眉がハの字になり、困ったような笑みを作り出した。
頻繁に会うわけでもなく、仕事が重なったときにしか一緒に帰ることなどしない私たちにとっては貴重な時間。
とくに彼女は楽しみにしていたらしく、今日は必ずねと私に念を押すように言い放つ。
大人びているし、実際大人な彼女がこうして甘えてくれる姿は私の好きな一面でもあった。
だから、無意識に緩む頬は致し方がない。



この感情はきっと全てまとめての 大好きなのでしょうね。

[ 37/40 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


トップ


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -