うみ

白い砂浜、晴れ渡る空に加え一定の頻度で鳴り響く波の音とくれば誰もが海水浴に来ていることは明白である。

そんな某日に歌姫で海水浴に来ればあちらこちらで賑やかな声(主にかおちゃん、ゆうちゃんなどの若い子チーム)が聞こえる。
え?アタシは参加しないのかって?そんなの決まっているじゃない。
アタシはあくまで皆の保護者的位置なのだから。



「みきちゃんは泳がないの?」
「ええ。もうはしゃぐ年でもないかなって思って」
パラソルにレジャーシートを広げた上に座るアタシに声をかけたじょえるちゃんはサングラスをかけて、優雅に微笑んだ。
ハーフというだけあり、サングラスが似合うなぁと思いながらもどこか牽制するようなオーラを醸し出す彼女に、アタシは苦笑いしながら答える。
それに歌姫の中ではアダルトチームなアタシがあの中に入るには勇気がいるのだ。

「残念。じゃあ私はかなみちゃんとはるかちゃんと泳いでくるわ」
「いってらっしゃい!気を付けてね」
ひらひらと右手を振り、じょえるちゃんを見送りながらアタシはパーカーを肩にかける形で羽織り、一人歌姫たちの楽しそうな姿を見守る。


10分くらいたった頃だろうか。頭上から柔らかな声がかけられてアタシは反射的にそちらに視線を向けた。
両手にかき氷をもつれみちゃんはアタシの隣に座るとにこりと可愛らしい笑みをみせた。
「…あら、れみちゃん。泳いでいたんじゃないの?」
「うん。けどね、かき氷が食べたくなったからこっちに来たの」
はい、どうぞ。みきちゃんの分よと差し出されたかき氷を両手で受け取ってしまう。
申し訳ないわと返すも、はやく食べないと溶けてしまうと言われればアタシは受け取って食べる道しか残されていない。

「んー!おいしい」
一口食べるときん、と頭に響くような冷たさが広がり先程までの暑さが消えていく。
いちご味のそれは、海で食べているからか何割増しにもおいしく感じる。
それに加え、隣に座るれみちゃんがかき氷を食べる姿はとてもほほえましく、アタシは自然と笑顔になった。

「おいしいわねぇ…ありがとう。れみちゃん」
「ふふ!どういたしまして」
しゃくり、とスプーン状のストローでかき氷をすくいご機嫌なれみちゃんを横目で確認し、アタシはきゃっきゃとはしゃぐかおちゃん達に視線を戻す。
暫くかき氷を堪能してから、れみちゃんがぽつりとなにかを呟く。
どうかしたのかと問い返せば、あのね…と頬を僅かに赤く染めながら話してくれた。

「本当はね。かき氷よりもみきちゃんと一緒にいたかったの。海で泳ぐのもいいけど、みきちゃんと一緒にいたいなって」
なんとも可愛らしいことを言うれみちゃんに今度はアタシが照れる番らしい。
ああ。かき氷で冷えたはずの体が再び熱を持ち始めたようだ。

「それにね…みきちゃんを一人にすると。だめだと思ったの。ナンパ、されちゃうかもしれないわ」
「っふふ。大丈夫よ。アタシはあしらえるわ。れみちゃんならされそうだけど」
「みきちゃんは案外断りきれないと思うわ。それに…!」

力説するれみちゃんに微笑んでから、一呼吸してアタシは立ち上がる。
手を差し出すアタシにハテナマークをみせたれみちゃんは、そろりとアタシに手を重ねた。

「ナンパされないためにも泳ぎにいきましょうか」
「けどみきちゃんは泳ぎたくないんじゃ」
「せっかく海にきたから、少しくらいならいいかなと思ったの」

砂浜を急ぎ足で歩みながら、海へと一直線で向かう。
「ああ、そうだ」
「なぁに?」
「水着似合ってるわ。かわいいわよ、れみちゃん」

陽に妬けていない彼女の肌が赤く染まったように思えるくらい、れみちゃんは照れたらしく。
れみちゃんはアタシの手を握り返してから小さく「ありがとう」と笑ったのだった。




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