深夜

一日限りの愛でも良いのです

薄暗い室内であっても向かい合わせで眠る彼女の寝顔ははっきりと見えた。
セミダブルとはいえ、無意識に彼女の方へ身を寄せていたみたいだった。
寝惚けながらも布団の中で偶然触れた彼女の手に私はなんともいえない幸福感に包まれた。長い髪がまるで彼女の顔を隠すように流れていて、起こさないように細心の注意をはらって彼女の頬へと指先を伸ばす。
規則正しい寝息が漏れる唇へと撫でるように触れると息を飲む。
彫刻のように美しく、罪を犯している気さえした。

構わず彼女の唇へと、キスをすればうぅん…と艶めいた声が漏れた。


「昨日私が寝ていたときになにかした?」
「どうして?」
「妙に唇が艶のあるままというか…こんな日は貴方がキスをしてくれるときくらいかなぁ、って」
意地悪な笑み。

本当は途中から起きていたらしい。だけど、私がかわいいからと暫く寝たフリに徹したようだ。
「今度は起きているときにキスをちょうだい」
この小悪魔というには大人な彼女に振り回されて、早一年。
だけど、どうしてか嫌な気持ちにはならず。
むしろ嬉しいと思える。


あなたが好きよ。
あなたにその気がなくて、遊び感覚でも、愛しく思うの。

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