わけもなく
わけもなく美しいと思ったよ
夜に月を見上げる姿が美しい。月明かりでほんのり見える笑みは、いつも隣で見るものより優しいものだから。
朝起きて、眠そうに身じろぐ貴方が可愛いと思う。
すこし隙があり、私の視線に気づけば不思議そうにこちらを見ることが愛おしいから。
運転する横顔が好き。
信号待ちになってから、急にこちらを見て笑う姿に、私の鼓動は緩やかなそれから激しいものへとかわるから。
「恥ずかしくない?そんなに並べ立てていて」
「すこし恥ずかしいかな。けど、たまには気持ちを伝えるのも悪くないと思うから」
日常を日常にしてくれた貴方の存在に私の毎日は色づく。
手を繋いで照れ笑いする。くすぐったい、甘い気持ちが溢れて、顔を覗けば仕方が無いとでもいうように息をついて笑ってくれる。
ねぇ、仁美さん。
名前を呼ぶと、なぁにと返答が返ってくる。
「やっぱり仁美さんの隣が好きです」
「ありがとう。光栄でございます」
笑う貴方に、私は胸に飛び込むように抱きついた。
___
胸に収まる身長が好き。
そう言ったら、佳香ちゃんはすこし拗ねるのだろうけれど私は好き。
優しくしたい。
大切にしたい。
そう思うけれど行動に移せるほど、器用でもない。
困ったものだと思いながら、優しい気持ちをくれた彼女に笑いかける。
私を見る姿が可愛くて、その微笑みが美しいと思った。
「好きだよ」
あふれる想いをたくさん込めて笑顔を贈る。
笑う貴方がとても愛しい。
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