空があまりに綺麗だったから、暫く黙って見上げていた。夏の雲より薄く、手で梳くことが可能であるなら消えてしまいそうに軽い秋の雲が好きだった。
一緒に見たいなぁと思ったのは純粋にこの空を彼女と見たなら、同じ感想を導きだしてくれそうだったから。
それに加え、一息置いてから微笑んで秋に関連する食べ物の話題もでてくるのだろう。なぜなら、私も彼女も食べることが好きだからだ。
なにを考えているんですか?
肩を叩かれ、自身を呼んだ人物へと視線を向ける。
なんにもないよ。ただ、秋だなぁと思っただけ。
そっけない返事を咄嗟にとってしまったのは、あいたいと思っていたその人がいつのまにか隣にいたからだ。

「仁美さんは隠し事が多いね」
「そう?そんなつもりはないんだけど。佳香ちゃんがそう思うなら、私は秘密主義なのかもしれないね」
なんて答えつつ、言われてみてそうなのかもしれないと自身の佳香ちゃんに対する対応を思い返す。
幸い、ポーカーフェイスは得意だからか、心情を読み取られることはないが、やはり佳香ちゃん相手だと調子が狂う。
余裕がなくなるのだ。


「仁美さん!」
もう一度よばれて佳香ちゃんのほうに顔をあげれば、ふにっと頬に彼女の指が刺さった。
「どういうつもりかな?」
「仁美さんが構ってくれないからいたずらしてみたんです」
和やかに笑う佳香ちゃんに私は降参の意を示し、彼女を抱きしめた。


「佳香ちゃんって案外甘えん坊だよね」
私の言葉に佳香ちゃんがてれるまであと数秒。
可愛いなぁと思うのは、自然な成り行きで私は頬が僅かに染まる彼女へと微笑んだ。


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